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第七章・龍の住まう家の、神ならざる神

国には、「守護神」というものがある。

建国する時に、国を守護する神を定める事で国の繁栄をその神に願うのだ。

例えば聖ホーストン教皇国は国教の唯一神が守護神と、

例えば六華皇国ヒューザベルズは雪と氷の女神が守護神と、定めている。

もちろんイー・ヴァー・ディドル龍帝国も例外ではなく、守護神は決まっている。

しかし、初代皇帝は無神論者で少し変わった男だった為、神に近きものを守護神の位につけたのだ。


そう、神の如き力を持つ、銀色の龍を。



***



「龍?龍ってあの…「杯」に住んでいたっていう龍族の事?」


後ろからひょっこりと顔を出したプリムが聞く。

この世界は判りやすい地理をしている。大まかに分けて、二つの大陸と一つの大地に分けられる。

この三つの大陸は全て、赤道よりも北部に位置する。その為、夏でも三分の一が雪と氷に覆われている。

まず、一番巨大な大陸、通称「魚」。

反り返る巨大魚のように、頭を北に向け、尾を南に向けた東の大陸。ここにはホーストンや遊牧民の土地であるホロがある。

一番小さな大陸が通称「獣」。

額に一角、長い尾を持った獣の形をした大陸は、「魚」の尾を追いかけるようにして西に位置する。

ここには、現在シオン達のいるイー・ヴァー・ディドル帝国やヒューザベルズ、商業都市国家マーロザなどがある。

この二つの大陸が囲む円形の海を「中央海」と呼び、中央海の北側に位置する台形の大陸を「黒」と呼ぶ。

黒、もしくは黒の大地。ここには人は住んでいないとされ、魔獣や魔物達の住処と古来より言われている。

さて、話は長くなったが、プリムの言う「杯」とは「緑の杯」の略称である。

「魚」の背の近くに位置する杯の形をした島で、ここには数多くの幻獣やエルフなどが住んでいる。

緑豊かな土地で、エルフなどが外界からの侵入者を許さない為に内部はあまりよく知られていない。

その「杯」の住人であった龍族とは、太古より存在する、神と同列にならぶ魔力を持つ高等知能生命体の事だ。

一見「竜」と呼ばれる魔物の巨大化したものに見えるが、二つは全くとは言えないが別種である。

その、龍族の事を言っているのだ。黒狐の青年とプリムは。


「いえ、確かに龍族の事であるのは間違いないのですが…」


アロドが更に後ろから割り込んでくる。


「恐らく、この国の守護神の事ではないかと」

「守護神?なんで龍が国のカミサマなの?」

「龍は神と同等の力を持つと言われていますから。それに、この国の守護神は「銀龍」です」


銀龍とは、その名の通り銀色の龍の事である。

龍族の中でも最も力が強いと言われ、龍族を統治する長の役割を果たすのもこの銀龍だ。

この国の昔話、というよりも建国の話なのだが、初代皇帝は国を統治する際に銀龍の友人と共に戦ったらしい。

その銀龍が今のイー・ヴァー・ディドル帝国を護る守護神という話なのだが、実際今もいるかどうかは怪しい。

そもそも人と龍が友人同士になれるのか。

あくまでも昔話、あくまでも逸話なので、一般には異種族間の友情物語として知られているだけだ。


「でもさぁ、龍って全滅しちゃったんじゃないの?何百年くらい前にさ」

「そうなんですよね、だからこの国の守護神の話もただの昔話、というわけです」

「ふーん」

「…攻めて来たのに、目的も知らなかったんですか?」

「だって、あたし一般兵だし。一般兵の仕事は戦力分散と魔法使いを捕虜にする事だもん」


戦争において、階級の低い兵士は余計な事は知らなくていい、そういうことだ。

しかし魔法使いを捕虜にするとは、ひょっとして人形の魔力に使うのだろうか。

とすれば一刻も早く彼らを助けねば、とアロドは思い、シオンに言おうとして、


「父上?」


返事はない。

呼吸も、していない。


シオンは魔術師の言葉を聞いてから、その場で固まったままだった。

まるで呼吸も、瞬きも、全て無くした静止物のように。

目を見開いて、息もつかないで、恐怖に凍りついた顔で俯いていた。

今までその状態に気づかなかったのは、あまりにも静かに、震えていたからだろう。

アロドは慌ててシオンの肩を掴んで、軽く揺する。


「父上!」

「っ!!」


もう一度、強く呼ぶとシオンは弾かれたように顔を上げた。

目を瞬かせて、ようやく呼吸をして、驚いたような、困惑したような、そして泣きそうな顔をしていた。


「大丈夫か、シオン」

「ああ、多分、まだ、大丈夫だ」


ぽんぽんと横からレスがシオンの肩を叩いて落ち着かせる。

まだ大丈夫。ということは、もう少しで駄目になるってことか、とレスは思う。

シオンは見た目の割りに知識も経験も並みの大人以上にある。だが、意外と心は脆い。

数年の間ずっと二人で行動していたレスはそれを知っていた。

見た目は頑丈そうだけれど、中身はやわい精神。だから、誰かが傍にいなければ壊されてしまう。


「まだ、大丈夫。こんな所で、止まってちゃいけない、から」

「そうかよ」


潰れなきゃいいけどな。

その言葉は音を持たなかった。


「…けど、お前がそんなになるって事は結構重大だってことだな?」

「私情も入ってくるけどな。くそっ、冗談じゃねぇぞ、まだ狙ってやがったのかあいつら」


忌々しげにシオンが呪詛を吐く。

その発言からすると、以前にも龍とやらが神国に狙われたかのような口調だ。


「ともかく、それが本当なら全力で神国軍を追い返さなきゃならない。…そこの魔術師、所属と名前は?」

「…歩兵隊魔術師(アルダ)部隊、第31番のフォクス・クラウンです」


魔力の消費が止まって、ようやくまともに口をきけるようになった魔術師は、そう名乗った。

狐の道化師。直訳すればそうなるが、聞くからにして本名とは思えない。


「偽名か?」

「偽名…というより、仮の名前でしょうか。どうも昔の記憶がないらしくて」

「そうか。貴重な情報ありがとう、後で何か礼をしないとな」

「いえ、貴方に褒めていただけただけで十分ですよ、魔術師団長殿」


フォクスはにこりと、疲れ交じりの笑顔を見せた。

その笑顔につい乗せられて、シオンも微笑み返すが、ふと何かが引っかかった。

いや、何も間違った所なんて無かった筈―――――


あった。

彼は、自分を、「魔術師団長」と呼んだ。

この、小さな少年の姿の自分を、仮の姿の肩書きで呼んだ。


少年の姿の自分は、騎士団長と、養子と、皇帝にしか教えていなかったのに。


「すみません、貴方の本を読ませて貰ったんです」


フォクスが申し訳なさそうに言った。

その手には、魔術書と勘違いしてしまったハードカバーの本。

それは、自分が書いた帝国の歴史書だった。

シオンは目を丸くして本を見つめる。確かに、それはこの書庫にあった本だ。

しかしその本は見つからないように、魔法で巧妙に隠していたはず。


「私の精霊は魔力に敏感なんです。だから、封印を強化する為に力の強い魔術書を選んだのですが…」

「もういい、わかった、もういい。その調子だと俺の事も全部知ってるんだろう?」


過去の過ちを、客観的に文字として残すことで自分を戒めたはずだったのに。

まさか今ここで、自分の正体が、今始めて出会った部下に知られる羽目になるとは。

まったく、知識も経験も揃っていても馬鹿は馬鹿だなと自嘲した。


「けど、今は何も言うな、絶対に。」

「ええ、私自身は言うつもりはありませんよ。…貴方が、言うべきかと」

「お前いい性格してるな…」


書庫の床に、仰向けになって寝そべっている青年を眺める。

穏やかな顔をしている癖に、なかなかどうして、やるもんだ。

久々に説教された気分になって、苦い顔をする。


「わかったよ、後で俺の口から話す。…アロド」

「はい」

「フォクスを回復してやってくれ。後、護衛を。その間に俺らは謁見の間に行くから」


わかりました、とアロドが呟く。

その手には、普段から補充している魔力入りの札。それをフォクスの額にべちりと貼り付ける。

このまま放っておけば札の中にある魔力がフォクスに流れ込む。

全て流れ込んだ時には、普段どおり歩き回れるようになるだろう。


「それとな、フォクス」

「はい?」

「あんまり凄炎を心配させるなよ。あいつ、ぶっきらぼうだけど主人第一な奴だから」


今度はフォクスが驚く番だった。

凄炎とは、フォクスが契約している精霊の名前である。

実はそれなりに高位の精霊だが、フォクスの契約精霊だと知る者は魔術師団の中でも数える程しかいない。

それなのにシオンは、今回始めて出会ったというのに精霊の名を当てた。


「何故、凄炎の事を…」

「俺は精霊と相性がよくてな、ほぼ全ての精霊と仲がいいんだよ」


仕返しだ、と悪戯っぽくシオンは笑う。

どうでもいい事を根に持つ辺り、結構子供だ。


「俺に勝とうなんて、五千年早いよ」

「ははは、それよりも生きている人なんて、いるんですかね」

「いるよ、俺の知り合いに。女運が無くて今も独身な寂しいやつ」


普通、人間は五千年も生きない。

けれど魔力を生命力に変える者は何年も生き延びるという言い伝えがある。

一般に、虚言だといわれているが、シオンが言うと本当の事に思えるのは何故だろうか。


「ま、凄炎はいいやつだから大事にしろよ」


そう言い、シオンはアロドとフォクスを残して扉を閉めた。


後に残るは、静寂。










龍 の 住 ま う 家 の 、 神 な ら ざ る 神 。




+++

第七話。
凄く悩んだ。
ものすごーく悩んだ。
うまく書けなかった感が否めない。

なんか不完全燃焼気味。

07/03/20

07/06/18修正・ちょっと日本語が変だった。




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【2007/05/25 23:00 】 | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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