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第三章・それは悪夢より絶望的な真実
さて、この状況をどうしたものだろう。

イー・ヴァー・ディドル第117代目皇帝ミーア・ディロイ・ヴァムストルは微笑む。

表向きは穏やかな笑顔ではあるが、内心、目の前の破壊者を吊るし上げにしたい程に感情が荒ぶっていた。


「さあ、どうする?皇帝さんよ」

「貴方達に皇帝と呼ばれるのはなんだか気が引けますねぇ。名前でいいですよ?」


その称号は、あの人から貰った地位だから。

私の名ならば幾らでも呼べばいい。私は幾ら穢れてもいい。

だが、その地位を、その帝座を穢せば、私はきっと破壊者全員を皆殺しにするだろう。

そう―――――目の前の、人質ごと。


「卑怯な人達ですねぇ。私は逃げも隠れもしないっていうのに、その子だって未来があるんですよ?」

「知った事じゃねぇよ。オレらだってアンタを連れて行かなきゃ仕事になんねぇんだ、早くしねぇとこのガキぶっ殺すぞ」


荒っぽい口調で捲くし立て、敵は少女の首に二つの鎌を交差させた。

鎌が近づけば、彼女の首はぽろりと、落下するだろう。

それはなるべくなら避けたい。彼は国民であり、国民は国を成すものであり、国を護るのは皇帝の仕事だ。

しかし、あくまでも「なるべく」というわけだ。

もし万が一皇帝の逆鱗に破壊者達が触れれば、この場にいる全ての生き物は皇帝を残して四散するだろう。

それほどの魔力を持つ、この皇帝は、この国の守護者以上に残虐な事ができる。

確かに、あの守護者は皇帝よりも遥かに強い。しかし、時の止まった肉体は、心も時を止めたまま。

恐らく、皇帝よりも残虐な事はできないだろうと、予測される。


「み、ミーア、さま」

「大丈夫だよ。大丈夫だから。…もう少しだけ、待っていてくれ…あの人が来るまで」


最後の言葉は、誰にも聞こえる事なく、戦乱の夜闇の中へと消えていった。

シオン・ハーティリー。

彼が来れば、私は。



***



「マジでか」

「至極真面目だが、何か」


あちこちで戦の音が響き渡る、この城下町。

唖然とする剣士と、平然とする少年と、騎士と、皇帝直属秘書が、輪を作って座っていた。

とりあえずは皆で情報交換のち、全員で行動という事になったのだが。


「娘か、これが!」

「これ、とは失礼な!私がシオン様の養子であるのは揺ぎ無い事実だ!」

「でもシオンはどう見てもお前より年下だぜ」

「お前、じゃない!アロドだ!!」


つまりは、どう見ても15歳のシオンが20を越えたアロドの義父とは見えないという話なのである。

それは確かに誰が見ても思うだろうが。


「こー見えても俺、結構長生きしてるぜ?」

「それは何となく直感でわかった。お前絶対年齢詐称詐欺してると思った」

「詐欺とは失敬な。この国じゃ「ロッソ・ヴァン・ダルダム」っつー名前でちゃんと大人の姿してるから平気だ」


びしっ、と親指を立てるシオン。

そういう問題じゃあないだろう、と騎士は黙って眺めているがあえて何も言わなかった。

だってこの国の守護者。なんたって守護者。子供に見えようと守護者。先程の魔法の破壊力で痛い程わかった。


「つーわけで、「ロッソ」の義娘のアロド・ヴ・ムスタ。俺の可愛い娘で皇帝直属秘書です」

「…」


どうやらレスは早々から嫌われたらしい。握手をする所か目を合わせてくれさえしない。

なんだか侘しい物を感じながらも「どうも」と軽く挨拶をする。

ちら、と睨まれてすぐにそっぽを向かれた。なんなんだ。


「んで、こいつが帝国獣馬騎士団団長のウィノデン・アルノー・トリシャ」

「どもです、デンって呼んでくださいな」


へらりと笑って手を差し出す騎士は、白髪に近い灰色の髪と翠玉色の瞳をしていた。

それなりの長身だったが、レスには程遠く、頭一個近く差がありそうだ。

何たって2mと180cmでは相当違う。

軽く会釈して、手を握った。騎士らしく、手は武器を握った肉刺で一杯だった。


「で、二人とも。こいつは数年前俺が拾った行き倒れの「ネイムレス」」

「記憶喪失ってやつでな、名前もわかんねぇから名無し(nameless)っていうんだ。まあレスって呼んでくれ」

「そんで俺が放浪者なシオン・ハーティリーさんってことで、自己紹介タイムは終了」


手刀を作って、空を切るジェスチャーをするシオン。

さて、と話題を持ちかける。


「まずは情報交換といくか。敵はどこの方角から来た?」

「十時の方角に突如現れた模様です。敵軍は瞬間移動魔法を心得ているようで、一個小隊毎に次々と」

「中には魔物もいましたねー、大体500程の人数で隊が形成されて、10隊近くはありました」

「魔物に五千の兵、どこの国の軍隊だよ…おまけに質もある。随分とでけぇ相手だな」


がしがしと、量の多い髪に手を突っ込み頭を掻くレス。

確かに、瞬間移動魔法を習得している魔法使いはそうそういない。

この帝国全体でもシオンと皇帝の二人しか持たない、難易度の高い魔法だ。

しかも一個小隊を30~50と考えて、それをまとめて送るには相当の魔力が必要になる。

シオンですら、自分を遠くへ瞬間移動させようとすればそれなりに魔力は減る。

瞬間移動魔法と相性が合う人間というのも時偶にいるが、相手はなかなかに強敵だ。

それに、魔物使い…召喚術士だろうか。魔物を使役する召喚術士も、そうはいない。

それを何匹、何頭も使役するとなると相当の使い手だろう。天賦の才があるに違いない。

敵は手駒も、人材もそろっている。

苦戦を強いられるのは間違いないだろう。


「で、ミオは?」

「へーかなら城で防衛中ですよー」


妙に間延びした言葉で、デンは答えた。


「「私の事はいいから、外の兵士を助けてあげなさい」って追い出されちゃいました」

「相変わらずだなー、あいつ。自分が皇帝って事自覚してんのかよ」

「一応自覚はしているみたいですけどね、自分の命よりも父上の心配ばかりしてるみたいですよ」

「それはそれは」


苦笑するシオン。

昔から皇帝は誰よりもシオンを第一にしてきた節があった。

それはシオンが皇帝の育ての親であり、親友であり、恩人であるからだろう。

普段は微笑んで感情を表に出さないが、いざ激怒するとなるとシオンでも萎縮してしまう程だ。

親子のような間柄なのに、親が子に萎縮するとは笑い者ではあるが。

しかし、それほど、ミオという男は冷静沈着かつ、隠れた激情家なのである。


「所でシオンさん、結構落ち着いてますけどひょっとして首都が襲われてるって情報出てます?」

「いや、途中でお前の部下と姫に会った。それで、俺の契約精霊使ってここまで走ってきたわけなんだけど」

「そうすか。いや、よかったよかった。アディラの奴ちゃんと逃げられたんですねー」

「心配ならお前も行けばいいだろ」

「まぁ姫様美人ですしねぇ。俺も騎士として、男として、お供したかったんですがねぇ、やっぱり団長としてへーか守らなきゃ」


にへら、と眠そうな顔に満面の笑みを浮かべるデン。

普段から居眠りしたり勤務中に脱走したりと問題ばかり起こしている団長だが、こういう時こそ一番の忠誠心を発揮する。

だからこそ、シオンは10年前、ミオと同時にデンの地位も上げたのである。小隊長から、団長へと。


「じゃあ、とりあえず目下の目標はミオの所まで行く事だな」

「え、敵兵倒すんじゃないのか?」

「ばーか、キリがないだろ」

「それに、それほど強敵でもありませんしね」


アロドが言い、腰のポーチから小さな紙を二、三枚取り出す。

それには「爆」という墨で書かれた大文字と、周囲に小さな文様を描いた符。


「ヨヤミニトドロケシンクノホノオ!」


ひゅ、と腕を振ると同時に符が前方へ吹き飛び、レスの背後を取ろうとしていた敵兵に付着した。

そして。


「『爆』」


爆発した。


「…………………符術士かよ」

「背中がお留守でしたよ。それでよく生きてましたね」


アロドの嫌味。

元々短気なレスは、もちろん激怒するわけで。


「しょうがねぇだろ、あいつ全く気配がしないんだぜ!」

「あら、それでもあれだけ近づいていれば気づかない訳がないでしょう?剣士なんだから!」

「気配がしなかったら気付かねぇのは当たり前だろ!」

「私はわかったのに!」

「しらねぇよ!!」


ぎゃいぎゃいと喧嘩を始める二人。あまり馬は合わなさそうだ。

それを見て、あーあ、とデンがぼやいた。


「アロドさんったら妬いちゃってー。シオンさんと一緒にいたからってそんなに気に食わないですかねぇ」


その言葉は、誰も聞かなかったが。

アロドはレスと口喧嘩をしているし、レスもまた然り。

残るシオンといえば、


「……………レス?」

「んあ?」

「お前が、気配に気付かなかったって本当か?」

「ああ、さっぱりだ。あんなに近いのに気付かなかった」

「…………妙だな」


眉根を寄せて、考え込むシオン。

その目が炎を見つめ、城を見つめ、そして、爆発して瀕死になっている敵兵に視線が移る。

ふと、何か思いついたのか敵兵へと駆け寄った。


「ああ、なるほどな」

「父上、何か分かりましたか?」

「うん、まあ、ほぼ確実って所かな」


だらり、と敵兵の腕を掴んで持ち上げる。

その腕の肉は裂けて、液体がぼたりぼたりと地面に染みを作っていく。

見なくても分かる、それは赤い、鉄錆の臭いのする、血液に違いない。

その血を、手で椀を作って溜めたシオンは言った。


「何だと思う?」

「何って…血、だろ?」

「舐めてみな」


ほら、と差し出した手の中の液体を、レスは覗き込んだ。

月明かりと壊れた街灯に照らされた液体は、ゆらりと赤い水面を振るわせた。

恐る恐る手を伸ばし、指に染み込ませて舐めてみる、と。


「―――――――――――っ!!!!!!???」


それは鉄錆の臭いとは程遠い臭い。

まるで何かの苦い薬のような、薬品のような、それでいて水のような、しかしどこか自然でないものの感触。

それは、明らかに、血ではなかった。

げほげほと咳き込み、血のようで血ではなかった液体を吐き出す。


「おま、殺す気か」

「大丈夫、死にゃーしねーよ。薬みたいなもんだと思えばいい」

「血ではない、となると…この者は……人間でない?」

「うぇー、何か気味悪いですね」


がくがくと揺れて、今にも死にそうなその敵兵はどう見ても人間にしか見えない。

焼け焦げた皮膚の臭いも、口角から血泡を吹いているのも、高熱を浴びて瞳が白濁しているのも。

全て、人間のものにしか見えない。

ここまでくると、たとえ人間であろうと人間でなかろうと、死は間違いない。

シオンはその様子に見兼ねて、首に手刀を叩き込んだ。がくりと首が垂れる。


「……こいつは、人形だ」


ぼそりと呟く。

シオンのその目は、息を引き取った人間でない人間…人形を見ているようで、見ていなかった。


それは、遠い遠い、過去。


「人に似せて作られた、科学と魔法の合いの子…」



ああ、作られてしまったのだな、と。

このせいで自分は今もたった一人、この世界を生きている。

このせいで自分は全てを無くし、こうしてここに立っている。

存在は聞いていたが、只の噂だと、虚言だと、自らに嘘を吐いて無視してきた。


それが、目の前にいる。





「魔道人形、マリアネッタだ」










そ れ は 悪 夢 よ り も 絶 望 的 な 真 実 。




+++

第三話。

アロドさんは嫉妬の人。
いや、多分親子以外に他意はないよ。お父さんを取られた気分なんだよ。
軽くファザコン気味。そしてシオンは心配性。

あえて言おう、私は陛下とデンが好きであると!!!
お粗末さまです。

07/03/11

07/06/18修正・主人公の苗字間違えるとかどういうアレだ。




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【2007/05/25 22:57 】 | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(1) | page top↑
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