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第一章・嗚呼、何故貴方はそうも綺麗に笑えるのか
は、と目が覚めた。

辺りは昇りつつある太陽と、やがて堕ちる月のお陰で平原が見渡せる。

その平原を二つに分断するようにしてできた道の端、ぽつんと立った木の上で寝ていた。

どくどくと、体中に血液が流れるその音が煩かった。

ずきずきと、木の上で寝たせいか痛む背が煩わしかった。

そして何より、悪夢を見て飛び起きた後の焦燥感と不安が抜けないのが邪魔でしょうがなかった。


「―――――夢、だよ。あるわけない、夢だ」


確認するように呟く。

それは己に言ったのか、それとも懐かしい友へ伝えたかったのかもしれなかったが。

銀色の長い髪が、汗でじっとりと濡れた額に張り付いて妙に苛々した。


「夢だ。うん、夢なんだ」


そして、もう一度確認した。

悪魔を祓う真言を唱えるかのように、彼は何度も何度も確認した。

何度目かわからなくなった頃に、怯える子供のような行為が馬鹿らしくなってやめた。


「……レス?」


下にいる同行者に声をかける。いつものように、返事はない。

まだ寝ているのか、と。そして半分は悪夢の苛々を解消する八つ当たりの為に、行動を起こした。

寝ている木の枝から降り、すたっと体格の大きな同行者の隣に着地する。


「起きろレス。朝だぞ」


返事は、ない。

小さく溜息をついて、普段のように片足を大きく振り上げた。



鈍い音と、大男の悲鳴と、太陽が昇り切ったのはほぼ同時刻の事だった。



* * *



「アンタってさ、本当に容赦ないよな」

「そりゃどーも。もう一発頭蓋骨陥没させるくらいの、受けてみるか?」

「謹んでご遠慮願います」


そんな、もう日課になってしまった、他愛も無い会話。

平原をてくてくと歩くのは小柄な少年と大柄な青年の対照的な二人の旅人。

少年は長い銀髪を一定間隔で結いながら、小さく早歩きをする。

青年はしばらく切ってなさそうなばさばさの茶髪を鬱陶しげに払いつつ、少年の後をゆっくりと追っている。

白い小さな少年と、茶色い大きな青年。

これほど妙な二人組み、しかも旅人は誰も見た事がないだろう。


「で、まだ目的地に着かないのか?」

「誰のせいだ」


はて、誰のせいだろう。前髪で外からは表情の見えにくい青年は、考える。

二人揃って大食いの為、食料が尽きて足止めを食らったことか。

それとも地図を無くして逆方向に一ヶ月くらい歩いていた事か。

それともどこぞの小さな村が山賊に襲われていたのを偽善気取りで助けたりしたことか。

それでその山賊が、思いの外規模が大きくて、しつこくて。返り討ちにしたら壊滅させてしまったわけだが。

思い当たる節が多すぎるが、とりあえずは。


「少なくとも俺のせいだけじゃないな」

「まぁ、俺のせいでもあるな」

「半々だろ」

「だな」


そうして会話は、続かない。

土踏む音と風が草を揺らす音のみが聞こえる草原で、二人は歩く。

別に、それほど仲が悪いわけではない。かといって特別仲がいい訳でもない。

元々知り合ったのはつい数年前、しかも少年が行き倒れた青年を拾ったという形で、だ。

しかも青年の方はどういう訳か記憶を無くしていて、そのまま放り出すわけにもいかず一緒に旅をしているという訳だ。

しかし利害一致だけではなく、お互いが妙に気が合っている為、数年も付き合っていられるのである。

そんな、外見だけでなく関係まで奇妙な二人だった。





「あ。レス、誰か来るぞ」

「お、ホントだ。…ありゃ騎士か?乗ってるのは馬みたいだが」


二人が向かう方向から一騎、何かが駆けてくる。

その何か、馬のような生き物の上には甲冑を身に纏った騎士と、その後ろには女性が座っている。


「…獣馬だ」

「獣馬?」

「イー・ヴァー・ディドル龍帝国、そこの騎士団が乗る馬だよ。通常の馬よりも機敏で素早い動きが特徴だ」

「ふーん。そういや龍帝国の首都に向かってるんだよな、俺ら」


この先の道は、龍を守護神とする国・ディドル帝国の首都クワル・ヴァ・リーアへと通じている。

つまりあの騎士は首都から駆けているという事になる。

そんな事を思案する内に、騎士は二人の目の前にまで迫り、立ち止まった。


「そこのお二方、この先は危険だ。行かぬ方が身の為だぞ」

「…危険?どういう事だ」


少年の目が剣呑の色を帯びる。

金色の瞳が騎士の目を捉え、心の奥まで見透かすように見つめた。

しばし沈黙が流れ、やがて騎士が呟くように話す。


「現在、首都は未確認の国家級軍隊に襲われている」

「…………状況は?」

「城下町が焼かれ、城は制圧寸前だ。敵の中には魔獣もいる」

「……まいったな、おいレス」


少年が、それまで二人の会話を聞いていた青年を呼ぶ。


「別の道でも探すのか?」

「馬鹿言え、ミオやデンが戦ってんだぞ、行くに決まってる。…で、騎士さん。アンタ名前は?」

「…………」

「どうした、人に言えないような名前か?」

「違う。ただ…何故、皇帝陛下と騎士長閣下の名を」

「あーそれは気にすんな、昔の知り合いだ。で、アンタは…鎧の紋章からすると、副長さんか?」


まじまじと騎士の鎧を見つめ、さらりと問題発言を連発する少年に、騎士団副団長は怪訝そうな顔をした。

何故このような、成人(※龍帝国の基準では15歳程で成人)するかしないか位の少年が鎧の紋章の違いなど知っているのだろうか。

帝国騎士団員の鎧にはそれぞれ紋章があり、それは騎士団の中での地位を示す。紋章は一般人には見分けがつかないものだ。

それに、皇帝の幼名で呼ぶ人間は、皇帝と親しい者しかいない。

とすれば、この、奇妙な出で立ちをした銀髪の少年は皇帝とは知人なのだろうか。

考えれば考えるほど、騎士は悩み込んだ。


「とすると…後ろの人は、もしやシュール・セナ・イ・マルシア皇女様かな?」

「…!!本当に、何者だ、キミは」


龍帝国では一部の人間しか知らない、隔離された姫の名前。

帝位継承権争いを防ぐ為に、次の帝位を継ぐ者は成人するまで名前と顔を隠して離宮に隔離される。

もちろん彼女も例外ではないが、成人する直前にある事件が起こり、それから10年も成人の儀を先送りにされているのである。

そういう訳でその顔と名を知っているのは、10年前の事件で亡くなった先代の皇帝陛下とその妃、そして専属の女中のみだ。

もちろん現在の皇帝でも顔はわからない。この国の上層部でも名前しか明かされないし、自分もつい先程知ったばかりだった。

それなのに、一目見て正体を見破った、この少年は。

騎士は腰の剣に手をかけて少年を見据えた。


「よい、騎士副団長。下がれ」


ふと、その剣に手が置かれる。

その手の持ち主は、背後の女性…シュール・セナ・イ・マルシア姫。

25年もの間離宮に隔離され、平穏無事に暮らしていても流石は帝王の一族。威厳は女性ながら十二分にもある。


「しかし、姫様!」

「よいのだ。……この者に、心当たりがある」


その瞳は真っ直ぐに少年を見つめる。

騎士は見ようとしなかった、その金瞳は、一部の人間しか持たない珍しい目を。

しばしの時が流れ、そして。





「汝が、我が国の守護者……シオン・ミュハトルテ殿か」





銀髪の、背の低い少年は何も言わなかった。

変わりに、子供らしく無邪気ににこりと笑っただけだった。










嗚 呼 、 何 故 貴 方 は そ う も 綺 麗 に 笑 え る の か 。




+++

やっとこさ第一話です。
しかも長いです第一話。
最初、第一話でレスとシオンが一緒に旅してる一面で終わるつもりでした。
でも第二話で姫と合流する話が短くまとまってしまったので一話に統合しました。
考えなしの結果ですたね。ははははは。

とりあえず主人公はシオンです。一応。
ヒロインでも脇役でもありません。主人公です。

07/2/9




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【2007/05/25 22:55 】 | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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