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第九章・人ならざる、龍ならざる、半分の子供
「聞こえなかったのですか?捕虜になると言っているんです、人質を解放しなさい」


あくまでも威圧的に、そして高圧的に。最後の皇帝は言い放つ。

若き皇帝は歴代の王に負けず劣らず、寧ろそれ以上の威厳を持っていた。

元は地方貴族、片親が皇帝の親族ゆえ、そして守護神の御心によって皇帝の位に就いた。

曰く、不本意だと、面倒だと。

彼はこの国の最高権威を、そう、言ってのけた。

しかし、最高権威には興味はないが、貴方の愛する国を護る為なら、私が身代わりになろうとも、言った。


「ほう?」


男は心なしか笑っているようだった。にやりと、獲物を追い詰めた猛獣のように。

その腕が天から、地へと下りてゆく。


「こんだけ粘っといて、今更呑むとはな。何が狙いだ?」

「いいえ、別に。強いて言うなら…」


ミオはシオン達の方を向いて、微笑んだ。


「シオンが来るまで、この国は私が護らなければいけなかったのですから」


それは十年前にした約束。

シオンが旅に出る間、ミオが国を護り抜くと誓った契約。

成人したはずの姫が今もなお帝位に就けなかったのは、その契約のせいだ。

本来ならばシオンが戻ってきた時点でミオは帝位を降り、そして姫は女帝になるはずだった。

しかし、姫はいない。この国も大打撃を受けた。

そこへ更に皇帝がいなくなればどうなるか、帝国は崩壊するのだ。

つまり、ミオ以上の権力と纏め役がいなければ、彼はこの帝国を去ることは許されない。

それは、自分の意思。


「後は頼むよ、シオン」

「馬鹿野郎!俺はお前を犠牲にする為に護れって言った訳じゃない!!」

「契約期間は終わった、私は貴方の命令に従う必要もないのでね」


師であり、親友であるシオンの言葉にも耳を貸そうとしない。

彼は、本気でこの国の為に、そして目の前の少女の為に命を投げ出す気だ。


「やめてくれ、ミオ」

「やめません」

「頼むから、行かないでくれ」

「駄目です」

「頼む……お前までいなくなったら、俺は」


「お喋りは、そこまでだ」


いつの間にか人質を解放し、ミオに接近していた敵が呟く。

そして、ミオの腹へと、強烈な蹴りが綺麗に決まった。

ぐ、と鈍い声を上げて床に転がる皇帝。彼らを除いた全員が、息を呑む。

普段は余裕綽々の笑みを振り撒いて、強力な魔力を持つミオではあるが、彼も人間だ。痛覚はある。

激しく咳き込み、苦痛に眉根を寄せるミオを更に足蹴にして転がす男は、笑っているようだった。

胸を踏みつけ、肺を圧迫させて肋骨を軋ませる。加虐趣味でもあるのか。


「ぐっ、が、あ…ッ」

「はは、あんだけ俺をコケにしといてこのザマかい、皇帝さん」


このままでは肋骨が折れてしまう、とシオンは魔法の火炎を男に放つ。

が、しかし、火炎は男に届く前に四散してしまった。

魔法が解けたのではない、瞬間的に張られた結界だ。


「おう、ありがとよ、エゲリヤ」

「あまり傷つけないで。血を流せばその分魔力は減るわ」


暗闇から、一人の女性。

その声は、先ほど兵士を部屋から退かせたものと同じだった。

恐らくは、男の仲間。すなわち敵。


「こんばんは、シオン・ハーティリー」


長い黒髪、漆黒の瞳、神秘的な衣装、手にした水晶玉は魔力増幅の品か。

妖艶な微笑みを口元に湛えた黒い美女。

彼女は、シオンの正体を知っている。とすれば背後の男にも正体は明かされているだろう。

遂に居場所が割れたか、とシオンは歯噛みする。


「シオン様、気をつけて。アイツは強いよ」


シオンの背後で、元神国兵のプリムが忠告する。


「知っているのか?」

「神国じゃ知らない奴はいないわ。幹部の一人で、称号は「水瓶」。エゲリヤっていうの」

「魔法使いだな?」

「うん。それで、後ろのは「巨蟹」、ゾナ・ルヴェール。もちろん幹部よ」

「女だったのかよ」


ゾナというのは基本的に女の名前だ。

レスが驚き半分、呆れ半分でぼやいた。


「うるせぇよ、好きで女に生まれたかった訳じゃねぇ」


ミオの胸から足を下ろして、ゾナが忌々しげに呟いた。

そしてミオの胸倉を掴んで無理矢理立たせた。


「エゲリヤ、飛ばしてくれ」

「ええ。向こうで殺したりしては駄目よ」

「しねぇよ。ま、ぶっ殺してぇのは山々なんだけどな」


はっはっは、と豪快に笑うゾナ。女に見えないのも無理は無い。

呆れ顔で溜息をつき、エゲリヤは呪文を唱え始める。

それは、移動魔法の一種。それも高度な。


「させるか!!」


シオンが再び火炎を撃つが、またもや結界に阻まれる。

レスも結界に斬りかかるが、結界は硬く、破れそうにも無い。

その様子を、鈍痛に苦しむミオが横目で見ていた。


「シオン…私の事はいいから」

「馬鹿かお前は!一人で行くなんて許せない!!」

「シオン」


ゾナも、ミオも体が消えかかっている。

もうすぐ移動魔法の呪文が完成する。完成したら、彼らは移動先へ瞬間移動する。

そうしたら、どうなる。

魔力を残さず奪われて、皇帝は死ぬのだ。

それでも最後の皇帝は、力なく、しかしいつものように微笑んだ。


「私は、初代ではありませんから」



そして、龍の住まう家の王は、姿を消した。



***



「畜生」


がつん、と結界を殴る。

がつ、がつと何度も叩く。叩いて、拳が割れ、結界の壁に血が飛び散って垂れる。


「何だよ、最後に、そんなこと、畜生、卑怯だよ、馬鹿野郎」


その怒りは、ミオに向けられたもので。

自分は初代とは違う。暗に、初代と混同するなと、説教したのだ。

初代とは何のことか?

答えは簡単だ、初代皇帝、ミオ・ヴァイ・ラグスタ。建国者であり、そして最初の皇帝でもあった男。


「お嘆きの所悪いけれど、私がまだいるのよ」


結界の向こうで、高度な移動魔法を終えてもなお汗一つかかずに平然としているエゲリヤ。

どうやらミオ並みの魔力は持っているらしい。とすれば厄介だ。

ミオをまんまと連れ去られて怒りは沸点に達しているはずなのに、異様に頭は冴えている。

まるで、静かに激怒するミオのようだと、頭のどこかで思った。


「どこで知った?」


ああ、そうか。温度計が上がりすぎて壊れるように、俺の怒りも沸点を通り越して気化してしまったのかもしれない。

ぼんやりと、しかし理性は冴え切って、現実から離れようとしない頭に嫌気が差す。

馬鹿は何年経っても馬鹿だけれど、変な所で成長するもんなんだな。


「五千年も前、まだ私達の国が「組織」と呼ばれていた程小さかったのは、知っているでしょう?」

「ああ、そうかよ。よーくわかった」


あの組織がまだ生きていたとは俄かに信じがたかったが、これが現実だ。

母は殺され、父は捕獲され、そして俺だけが生き残って。

ふつふつと、何かの感情が湧き上がる。気化した怒りが身体に戻ってきたのだろうか。

いや、これは恐怖だ。

ずっと昔に植えつけられた、組織の恐怖。

フォクスに、神国の目的を告げられた時と同じ、恐怖。


「お前らしつこいよ。何度も何度もやってきやがって、父さんだけじゃ足りなかったのか」

「足りるわ。足りすぎて困るくらい。でも、彼は完璧な存在だから、五千年も彼の魔力を奪うことはできなかったのよ」

「そりゃよかった、ってことはまだ生きてるんだな?」

「ええ。流石に、狂ってしまったけれど」

「………」


言葉の攻防戦は、俺の負けで終わった。

言葉が続かない。

父が、狂気に呑まれたと。女は確かにそう言った。

そうか、ならば生きていてもほとんど死んだも同然なのだろうなと思った。

怒りは再び沸くことは無かった。恐怖も掻き消えた。


残るは、ただ、虚無だけ。


「だから私達は貴方を選んだのよ」


無慈悲な美女の声が響く。


「不完全だからこそ、貴方の魔力は奪えるの」




「そうでしょう?イー・ヴァー・ディドル龍帝国の守護神、銀龍の末裔、シオン・ミュハトルテ」










人 な ら ざ る 、 龍 な ら ざ る 、 半 分 の 子 供 。





+++

第九話。
一回消えたorz

実は書いている間、ずっとサンホラの「お願いっ!ぴこ魔神☆」聞いてました。
歌のテンションに振り回されつつ書いてました。
これじゃ駄目だ、変えなきゃと思って変えたのは「黄昏の賢者」。
これが更にテンションの高い歌でして。駄目だ駄目だ。

結局、「恋人を射ち堕とした日」に治まりました。うあー人死にだよー。

07/04/03




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【2007/05/25 23:02 】 | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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