移転完了。タイトルに深い意味はなし。というよりネタ。
内容は【Marionette Phantasia】関連しかないと思われます。
- 2010 . 01 «
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
- 7
- 8
- 9
- 10
- 11
- 12
- 13
- 14
- 15
- 16
- 17
- 18
- 19
- 20
- 21
- 22
- 23
- 24
- 25
- 26
- 27
- 28
|
新しい記事を書く事で広告が消せます。 |
|
目次です。
いちいち探すのが面倒な人向けです。 まずは【はじめに】からどうぞ。 次は【キャラクター紹介】とか行ってみるとスムーズに話がわかるようになるかもしれません。 見なくても話はわかりますがね。 【はじめに】 【キャラクター紹介】 【Marionette Phantasia】本編 序章・懐かしき貴方へ、平和を捧ぐ 第一章・嗚呼、何故貴方はそうも綺麗に笑えるのか 第二章・それでも俺は、貴方に付いて行く 第三章・それは悪夢より絶望的な真実 第四章・僕達にできるたった一つのこと 第五章・その笑顔は小悪魔か、大魔王か 第六章・偶然の一致ほど怖いものは、ない 第七章・龍の住まう家の、神ならざる神 第八章・貴方の為と思い、想うから 第九章・人ならざる、龍ならざる、半分の子供 第九と二分の一章・ネイムレス・トーク 第十章・虹色カタストロフィ 第十一章・暗闇サンクチュアリィ 第十二章・青空スマイリー 第十三章・錆色ノスタルジア 第十四章・ゴッド・ビー・ウィズ・ユー 第十五章・白羊、揺々ト思フ |
|
「塔」、それは神国フィラータにある全ての国家機関が寄り集まってできた超高層ビルの通称である。
円柱状に空に向かって伸び、天辺に円盤状の神殿と議会場のついたこのビルは、建築物として非常に不安定だ。 しかし、この国の頂点に立つ「神」デウス・エクス・マキナが膨大な魔力により塔を支え、そして外部から国が発見されないよう、周囲の地形と同化できる迷彩皮膜を塔の天辺から国周辺へと撒いている為に国は周辺国に発見されることなく平和を保っていた。 それゆえ、他のビル群を押しのけ、天高く聳え立ち、その最上階に神を頂く塔は、この国の象徴でもあった。 そんな「塔」の一階に、神国の国家公務員や軍人が使用する厨房は存在している。 今日も人々でごった返す食堂のカウンターの片隅に彼らはいた。 「はい、ラックルさん」 「いつもありがと、ケア」 笑顔で温かい料理の乗ったトレイを受け渡しする二人。 片や、手渡す方は真っ白い三角巾とエプロンを身に付けた、幼さの目立つ少年。 真っ白い衣装と髪の中、色を持っているのは肌と緑の瞳だけだ。 しかし希薄な印象は感じられず、寧ろその白さが目立つのとその元気な性格で人々に好まれる為に「塔」では知らぬ者はいない存在だった。 エプロンの胸元には、食堂の職員だということを示す名札がピンで留められていた。 片や、受け取る方は真っ白い詰め襟の服と同色の犬の尻尾が生えた半獣人の少年。 一応10代後半という年ではあるが、長く青い髪を後ろで一本の三つ編みに結っているので幼く見えるのと、低い身長と、ケアとそう変わらないように見える童顔のせいでいくつか若く思われる。 しょっちゅうその事で同僚にからかわれている為、彼、ラックル・ヴァンディオは「小さい」や「幼い」といった言葉には人一倍敏感だった。 「いやぁ、ラックルさん、俺なんかに礼なんかしなくていいっていつも言ってるじゃないすか」 「そうでもないよ、いつも世話になってるし、料理だってうまいし。そうそう、この間サイレスが誉めてたぞ、お前の料理美味しいってさ。いつか結界から出れたら教えてほしいって」 「マジっすか!?「双魚」さんに誉められるなんて光栄ですよ!」 わいわいと喜ぶケアを見て、ラックルは笑顔でこっそり思った。 だってサイレスの奴、料理苦手だしな。 しかしこっそりと胸の内に閉まっておく。 流石にそんなことがわからないほど子供というわけではない。 それに、そんなことよりも、聞きたい事があった。 「所でケア、お前、俺らの専属になるって聞いたんだけど本当か?」 「え?ああ、はい、そうですけど…」 なんでそれを?と言いたげな顔のケア。 ラックルは苦笑する。 サイレスの魔獣からの情報だなんてつまりは人権侵害だ、言えるわけがない。 いや人権と言っていいのだろうか、微妙な所だ。 まあ魔道人形の国ではケアも「人間」なのだし、深く突っ込まないでおく。 「ちょっと噂になってるのを小耳に挟んだからさ、確認しようと思って」 「へぇ、エルダ様が今日俺を推薦してくれたんすけど…情報って結構流出するもんですね」 「ははは、まぁな」 流出の原因は魔獣による盗聴盗撮です。 なんて、言えるか。 「俺、十二使徒様のお手伝いするのが夢だったんです。今度から部屋が汚れたとか服を洗ってくれだとか、全部俺に任せちゃっていいっすよ!」 「おー、宜しく頼むぜ」 張り切るケアに、ラックルは微笑む。元気なのはいいことだ。 十二使徒とはこの国で神の次の地位に属する、十二と一人で構成される「人間」の機関の事だ。 魔道人形の国である神国で人間が神の次に偉いとは、皮肉なものだとラックルは思う。 建国当時、十二使徒のように魔道人形の機関を置いた所、魔道人形に誤作動があって反乱を起こしたそうだ。 以来、国外から魔力や戦闘能力の強い人間や優れた頭脳を持つ者を受け入れては神の代わりに様々な仕事をさせているのだ。 中には建国当時から生きている者や、代々神に仕える者もいた。 ちなみに十二使徒の仕事は主に神の手足として政治、治安維持、国外での諜報活動など、表から裏まで様々ある。 ラックルとその相棒が担当するのは主に治安維持と諜報だ。 そのため、ラックルは国民との接触が他の十二使徒よりも多く、彼らからよく親しまれている。ケアがその一番いい例だ。 所で、魔道人形が大半を占めるこの国では、正式には人間は十二使徒とその候補生、そして魔道人形の技術者しかいないとされている。 もちろん例外もある。 一つは世界議会から人間と認定されていない悪魔族などの種族。 彼らは神国に忠誠を誓う限り、世界各国から追われることなくこの国の国民として扱われる。 しかし、国民ということは魔道人形と同じ扱いを受ける為、人の数に入れてもらえないのだ。 更に徴兵制があり、戦闘用魔道人形「オートドール」にできない戦闘は彼らにさせる。 国民とは言えど、扱いは国民以下である。ただ、十二使徒になれば話は別なのだろうが。 もう一つは、神国が建国される以前にこの土地に住んでいた人間だ。 彼らは神国の端にあるスラム街に押しやられ、国籍も与えられず、魔力の枯渇した土地を耕しては少ない食料を得て生活している。 しかし弱り切っていても今の処遇を改善すべくレジスタンスを組織していると聞く。 とは言っても、目立った活動は町で店を襲撃して食料を奪うくらいだが。 まあ仕方がない、生きる事を優先しなければ反政府運動をする以前の問題だから。 「神」は理想国家を造ろうとしているのはわかるが、この問題を完全に使徒に丸投げしている辺りどうかと思う。 ラックルはしょっちゅうその話を同僚にしては不満を漏らすのだが、同僚はそれに対して自嘲するような笑みを浮かべて答えた。 神なんていないよ、と。 元天使族だったらしい、その同僚が言うと、異様な説得力があったのを覚えている。 「…じゃ、料理が冷めるといけないから、この辺で」 少し居座りすぎた。このままだとサイレスと自分の昼食が冷めてしまう。 ラックルは食事の乗ったトレイを2つ持って食堂を出ようとした。 しかし、ぐいっと服の裾を引っ張られてラックルは立ち止まる。 見れば、ケアがカウンターから身を乗り出して服を掴んでいた。 そんなケアは、真剣な眼差しでラックルを見詰めていた。 「お仕事頑張って下さいね。俺も、早くラックルさんみたいな「人間」になりたいっすから、これから頑張ってサポートしてあげますからね。期待していいっすよ」 「…うん、そうだな。ありがとう、ケア」 「いえ、引き留めてすんませんでした」 またいつものように、快活さが溢れ出る笑顔に戻るケア。 ラックルはケアに一礼して、人の多い食堂を抜け出た。 食堂から数歩離れた場所まで歩き、ふぅと溜息をつく。 人混みに苦しくなった訳ではない。ケアの言葉が、重くのしかかってきたからだった。 すまない、ケア。俺はお前が望んでいるような「人間」じゃないんだ。 まるで詐欺師になった気分だと、ラックルは思う。 「なぁーに突っ立ってンだよ、立ちながら寝てんのか?」 そんな、剽軽な声と共にラックルは頭を叩かれた。 思わずバランスを崩して両手の料理を落としそうになるが、何とか踏みとどまる。 ラックルは荷物を落とさないように、しかし素早く振り返って襲撃犯を睨んだ。 「何すんだよ、ラザン!」 「うちのチビすけ君が立ったまま寝てるみてーだから起こしたんだよ、感謝してもらいたいねェ」 ラザン・ホルガーソン。ラックルの同僚にして相棒でもある堕天使族の男。例の、神なんていない発言の元だ。 元は金髪碧眼で純白の翼を持つ天使族だったが、罪を犯して地上に堕とされたそうだ。そのような天使は堕天使と呼ばれるらしい。 その証に、ラザンの髪は黒紫、瞳は金色、翼は漆黒に染まっていた。 ラザンはいつものようににやにや笑いを浮かべてラックルを見下ろしていた。 しかしいつもと違うのは、ラザンの左頬が赤い手形に腫れている所だろうか。 また沢山女作った事がバレて平手打ちを食らったのだろうとラックルは呆れた。 元天使とは思えないほどこの男は女にだらしがない。 きっと天使族の時に犯した罪っていうのは女絡みなんだろうなと、今の所ラックルはそう推測している。 気が付けば色んな女に手を着けていて、七股以上していると聞いた時には流石のラックルも武器を持ち出して制裁を加えたこともあった。 しかし、女を捨てるような事はしないし、避けられるはずの平手打ちを避けようともしないのはラザンの優しい所だ。 そこだけはラックルもラザンを評価していた。 しかしラックルはこの男が嫌いだった。 「だから、チビって言うな!」 ラックルが足で思い切りラザンの脛を狙うがラザンはふわりと宙を待って避けた。 翼は開いていない。天使族の翼は高速飛行でしか使わず、大抵は魔力を使って飛ぶのだ。 ラックルが綺麗な舌打ちをする。 嫌いな理由、それはとても簡単かつ明白な事実。小さいとからかわれるからだった。 「そう怒ンなって、更に縮むぞー?」 「今すぐ降りろ、そのツラ今すぐ潰してやる」 「ヤダね、そんな事されたら世界中の女の子が俺のために泣いちまうぜ」 両手の料理を落とすこともなくラックルは鋭い蹴りをラザンの顔に放つ、が、ラザンはふよふよと浮いては軽くそれをあしらった。 今度はトレイを宙に飛ばし、跳び蹴りを食らわせる。また避ける。着地した先で飛んだトレイをキャッチ。どこも零れていない。 滅多にお目にかかれないような格闘術ではあったが、周囲の人間…否、魔道人形はまたいつもの喧嘩かと無視するか微笑ましく眺めているかのどちらかだった。 どうやらこれはいつもの事らしい。 「なぁラックル、そろそろサイレスの所行かないと料理冷めるんじゃないか?」 「あ、そうだった」 ラザンが止まり、眼前でラックルの蹴りが止まる。 その表情に先程の怒りはない。 本当はそう怒っている訳ではないのだ、いつもからかわれているから。つまり慣れだ。 いわゆる条件反射のようなものである。 ラックルは足を下ろし、料理が零れていないか確認して、何事も無かったかのように歩き出す。ラザンも後に続く。 大きな扉の前に立ち、上を向いた矢印のボタンを押した。 すると扉が左右に開き、小さな狭い部屋が姿を表し、ラックルとラザンは中へ入る。 ラックルは片方のトレイを頭に乗せ、沢山あるボタンのうち一番大きい数字を押した。扉が自動的に閉まる。 がこん、と音がして部屋全体が動いた。 「いつ乗っても不思議だよなーコレ、どうやって上がってるんだろ」 「さぁ?知った所で俺らにゃ関係ないだろ」 確か神国の科学者は「エレベーター」だと言っていた。鉱山にあるリフトの質が格段に良くなったものと考えていいらしい。 科学って便利だ、とつくづくラックルは思う。科学者に言わせれば正確には魔法科学と言うそうだが。 外国で言う魔道具の改良版なんだそうだ。 イマイチ魔道具と魔法科学の違いなぞわからないが、どちらにせよ人の為に科学を使うのはいいことだと思う。 階段だったらきっと恐ろしい段数になっていただろうから。 しみじみそう思うラックルだった。 がこん、と再びエレベーターが揺れる。 最上階に着くには早すぎる。ラックルが階数を確認すると、6と書かれた数字の所でライトが瞬いていた。 扉が静かに開いて、二人の軍人が鉄箱を抱えて入ってきた。 「お、「白羊」さんに「天秤」さんじゃないか。元気してたか?」 「お久しぶりです」 片や、髭面でサングラスをかけた片腕の巨漢。 片や、両足に軍用の大型拳銃を差した眼鏡の女性。 オールバックで褐色の髪をしていて、黄玉色の瞳の目を細めて笑うその男の名はサライ・トロイクールという。 冷ややかな藍玉色の瞳を閉じて一礼し、紅茶色の髪をさらさらと肩から落とす女性の名はフォルト・ラン・シエルという。 前者の軍における階級は王佐、後者は元佐である。 もちろん、双方とも魔道人形だった。 実行部隊であるラックルとラザンは軍部によく関わりがある。そのため、お互い面識はあった。 右腕の不自由な上官に代わり、フォルトが32のボタンを押して、扉が閉まる。 「フォルトちゃん久しぶりー。相変わらず美人だねェ、後で俺と食事行かない?」 「お気持ちは嬉しいのですが、今は勤務中ですので」 「前もそう言ってたじゃん、その前も、そのまた前も」 「ええ、行くつもりはありませんので」 「ええー」 ラザンがフォルトを口説くが、彼女は凛として誘いを断る。 お堅いねぇ、とラザンは残念そうに引き下がった。 お前は美人と見ると魔道人形も口説くのか、とラックルは言い掛けたが、よくよく考えてみればこの国は人形の国だった。彼がいつも引き連れている女も魔道人形のはずである。 まあ魔道人形は人形とはいえ、人間と中身はそう変わらない。 内臓は人工臓器を使っているし、人間と同じ成分で作られた皮膚や肉で作られている。 違うのは子を産めない事と体内を巡る血液が魔力凝縮液だというくらいだ。 本当は人間となんら変わらないのだ、魔道人形は。 だからラザンは魔道人形も人間も変わりなく接する。厳密に言えば美人か女か美人じゃないか男であるかで対応は変わる。 そういえば昔、ラックルは人形の女と遊んで楽しいかと皮肉った事がある。 それに対するラザンの答えは、「まぁ、機能は同じだし」と言っていた。 最低だ。 「しっかし俺のフォルトを口説くとは流石十二使徒。だがフォルトは俺の物だッ」 「勝手に物扱いしないでください」 サライの発言にフォルトが突っ込み足を踏みつける。 上官の足を踏みつけていいものなのか、お互い慣れているようだからいいけれど。 サライが普段フォルトに迫っているのは前々から知っていた。 ぎゃあと叫ぶサライを眺めながらラックルは思う。 「ちぇ、今日は彼女に振られるしフォルトちゃんはつれないし…女運が悪いのかなァ」 「また二股がバレたんだろ」 「ちげーよ、ナンパしてるとこ見られたんだよ…ちなみに今五股な」 「ばかやろう」 ラックルはラザンを蹴るが、またもやふわりと避けられてしまう。 もうラザンに深く突っ込むまいとラックルは心に誓った。 フォルトも呆れたような顔をしていたが、話題を変える為にラックルに話しかけた。 「「白羊」殿はこれから「双魚」様の所へ?」 「うん、ちょっと遅くなったけど、昼飯を運びに」 白羊とは、十二使徒の証である称号の一つで、ラックルの事だ。 十二使徒の称号は十三あり、それぞれ黄道十三宮の名を冠している。 ちなみにラザンは天秤、双魚はサイレスの事である。 「そーいや、サイレスってどんな奴なんだよ?噂では渋いおっさんらしいけどさ」 「そうなのか?俺は絶世の美女って聞いたぜ」 「私は老人と聞きましたが…」 サイレスの実態は一部を除き、誰も知らない。 一般には強力な魔獣を操る召喚師であり、人間との関わりを疎んで「水瓶」エゲリヤの作った結界に住み、そこから魔獣を操って使徒の職務をしているとだけ言われている。 男か女か、老人か子供か、そもそも強力な魔獣を何体も使役している時点で人間の域を越えている、とも噂されている。 しかしサイレスに関する情報は本人の希望で流出しないでもらいたいと言われている。 サイレス自身、噂されることを案外楽しんでいるのかもしれないなとラックルは思った。 と、その瞬間、頭が急に重くなり、ラックルは叫ぶ。 「何だ!?…いて、いてててっ」 黒い羽が舞っているのが見えた。ラザンのとは違う、赤みのある黒だ。 ということは、恐らく頭にはサイレスの魔獣である烏がいるのだろう。 赤黒い羽の烏の名は、確か。 「地周、痛い!頭に爪を立てるな!」 「この馬鹿犬め、遅いぞ!いつまで主を待たせる気だ!」 「わかった、今向かってるから、痛いから離れろ!」 地周…烏は重く低い男の声でラックルを罵る。 ラックルは頭を振って地周を追い払うが、地周はまた舞い戻って今度は右肩に乗った。爪が痛い。 すると今度は左肩が重くなった。見れば青みがかった烏が乗っている。 こちらは爪を立ててこない。 「天英、もしかしてサイレスが怒ってるのか?」 「ううん、サイレスが「ラックルさん、遅いですね」って呟いたら地周が暴走してきただけ。しかもわざわざ移動魔法まで使って来てさ」 少年の声で、青黒い烏…天英がぼやく。 地周は「主の需要に応えるのも配下の仕事だ!」と右肩から天英に反論した。 左肩から天英が「サイレスはしてほしいなんて一度も言ってなかったじゃないか」と突っ込む。 耳の傍で騒がないでほしい。両腕のふさがっているラックルは耳を押さえることもできずうんざりした顔になった。 両肩の烏にしばらく唖然としていたサライが訊く。 「白羊さんや、こいつらは?」 「む、貴様のような輩に主から頂いた名を言うと思っているのか。名を名乗れ、名を!」 「ごめんねおじさん、地周って短気なんだ。僕は天英、サイレスの魔獣だよ」 「こら天英、見ず知らずの者に名を教えるでない」 「ラックルの知り合いだから平気だよ」 ラックルの肩と頭の間をちょこまかと動き回るカラス達。 普段サイレスの代わりに会議に出席するので十二使徒にとっては馴染みのある二羽だが、軍人の二人は知らないらしい。 「すみません地周殿、私はフォルト、彼は私の上官のサライ殿です」 「うむ、礼儀がなっておるな。しかし…あのような上官を持ってさぞかし苦労しているだろう」 「ええ、本当に」 「おいフォルト、否定しろよ」 「残念ながら嘘をつけない性格に「設定」されていますので」 「お前な!」 やいやいと騒ぐ内に、エレベーターが32階に辿り着き、扉が開く。 フォルトは一礼し、サライはにやりと笑い、ラザンはふわりと浮いてエレベーターを出た。 「あれ?ラザン、ここで降りるのか?」 「あー、上行っても暇だし、シヴェースんトコ行ってくる」 「またいかがわしい本とか借りてくるんじゃないだろうな」 「あ、なんでわかったの?」 やっぱりか、と思いラックルは口を開くが、扉が閉まっていく。 じゃーなー、とにこやかに笑うラザンの顔が扉の向こうに消え、ラックルは二羽の魔獣と共に残された。 最上階まで、これまでの3倍以上の時間がかかる。それ程までに「塔」は高いのだ。 それまでこの魔獣達と一緒なのか、とラックルはうんざりした。 いつも地周からは散々悪態をつかれ、なじられるからである。サイレスが大切なのはわかるが、文句の嵐を受けるのはまっぴらごめんだ。 しかし、地周は全く話さなかった。天英も然り、だ。 ラックルは不思議に思ったが、怒鳴られるよりはましだと思って何も言わなかった。 40階。 50階。 53階を過ぎた辺りで、地周が嘴を開いた。 「ラックルよ、お主に聞きたい事があるのだが」 来た、とラックルは思った。 またいつものように叱られるのかと覚悟した。 だが、しかし。 「お主…何者だ?」 え、とラックルは地周を向く。 真っ赤な目がじっとこちらを見詰めていた。 「…俺は、ラックルだけど、それがどうしたんだ?」 「とぼけるな。お主、ただの人間ではないだろう。ずっと前から気付いていたが、主の手前言い出すこともできなくてな」 「気付いてるのは僕らだけだ。そろそろ、教えてもらおうと思って」 動悸が早くなる。 バレた。 流石は地周と天英。この程度のことはお見通しか。 こう見えて地周と天英は人型もとれる大魔獣である。 その能力は空間移動術と同族同士の通信能力。 これまでの名のある魔術師…あのエゲリヤをも凌ぐ移動能力を持つ。 いや、そんなことは大した問題ではないのだ。 問題は、天英も地周もラックルの正体を嗅ぎ取れる程の感知能力を持つことである。 60階を越えてから、ラックルは口を開いた。 「…人間だ。俺は、人間だ」 「嘘つかないで、他のみんなは誤魔化せても、僕らは誤魔化せないよ」 「我々はお主の正体が知りたいだけだ…だから、主人のいないこの時に来た」 ラックルの頬を、冷や汗が流れる。 70階。 「我々も、主人に告げる気はない」 「ただ、教えて欲しいんだ。君がサイレスといて安全な「もの」なのか。僕達はサイレスの配下だ、安全を確かめないと。それが召喚獣の役目なんだ」 80階。 「教えて欲しい」 「お主を、疑わない為にも」 90階。 「煩い」 ラックルはようやく口を開いた。 静かに、ただ前を向いて、二羽のどちらにも目を向けずに、話す。 「そんなに知りたいか?俺がどんな怪物かって?教えてやるよ」 内側の、本性が牙をむいた。 獰猛な獣気が漂うのがわかる。 普段押し殺していた中身が不安と共に爆発した。 「俺は、人間も魔獣も同族の怪物さえも「喰う」…化け物なんだよ!」 言い切ると同時に、二羽はラックルの肩からかき消えた。 危険な「もの」と認識したのだろう、そしてそれを主であるサイレスに報告しに行くのだろう。 自分の胸から、何かが零れ落ちて、穴が空いたような気分になった。 がしゃん、と両手のトレイが重力に従って床に落ちる。 所詮化け物は人間とは相容れないのだと、思った。 魔獣にも受け入れられないのだとも、思った。 沈黙したまま、エレベーターは昇ってゆく。 不意に、ぼすんと頭に何か重たい物が置かれた。 何かと思ったら、目の前には見上げるだけで首が痛くなりそうな巨漢がいた。 どうやら、最上階に着いてしまったらしい。 サライ程ではないが、それでもラックルよりも二つ頭分以上はある。 髪は焦げ茶で、同色の瞳が鎮座する鋭い目でこちらを見下ろしていた。 服装は茶と緑を基調とする遊牧民族の衣装だった。 顔つきは、ラザンと張れるくらい整っている。ただし、軟派と硬派とで違う印象を与えるのだが。 「アザル…」 「どうかしたのか、ラックル」 アザル・ラグランタ。十二使徒の一人、「獅子」だ。 寡黙で己に厳しくて強さを追い求めるが、一方で自然を好む優しい性格の彼はラックルの憧れだった。 腰に二本の刀を差しており、それが極東の島「ミカガミ」にいる「サムライ」のようで、ラックルは普段彼を慕っていた。 彼はラックルの頭に右手を置き、ぽすぽすと宥めるように軽く叩いている。 最上階からエレベーターに乗るつもりだったらしい。それでラックルと鉢合わせた訳だ。 尊敬する相手に、ラックルは不機嫌そうに頭を振って手を振り払った。 「やめろっ!」 アザルが目を見開いて驚いていた。 困ったような顔で、何か気に障るような事をしたかなと言ってる風だった。 ラックルはそんなアザルを見て、自分が何をしたのか理解し、顔を紅潮させた。 八つ当たりをしてしまった。あのアザルに、何も知らない彼に。 ラックルは後悔と羞恥から走り出し、アザルを突き飛ばし、そのまま最上階の廊下を走り抜けた。 「ラックル!」 アザルが背後から呼んでいるが、ラックルは振り返らずに走った。 ただひたすらに、がむしゃらに駆け抜ける。 そうした後に、廊下が終わって行き止まりになった。 その壁には、これまでの十二使徒の名が刻まれた墓碑があった。 この先にはサイレスと、その配下の魔獣がいる。 壁の向こう、そこにはエゲリヤの魔術で作った空間が書庫の形をとって存在している。 サイレスは人との関わり合いを避けて、何年も前からここで召喚獣と生活していた。 ここに入れるのは、「化け物」だったために元々この空間に閉じ込められていたラックルと、その世話役だったラザンと、エゲリヤだけだ。 エゲリヤは多忙な為、ラザンは辞退した為、現在は消去法でラックルがサイレスの世話役となっている。 そういうわけでラックルは、人と関わろうとしないサイレスと、誰よりも仲がよかった。 しかしラックルはサイレスに会いたくなかった。 きっと、俺の正体を知ったあいつに拒絶されるだろうから。 それだけは見たくなかった。 後悔と羞恥と怒りと悲しみと、内側の狂気が入り混じった感情で混乱していた。 膝を付き、墓碑に寄りかかり、うなだれる。 そうして、やがて、廊下に少年の嗚咽が響きだした。 白 羊 、 揺 々 ト 思 フ 。 *** あとがき。 つかれた。 もうやだ。 携帯嫌い。 携帯面倒くさい。 でも携帯で書くしかない。 うああああ。 ラックルがシオンばりにネガティブになった…ちくしょう。 私自身がネガティブなのでネガティブキャラって動かしやすいのよね。 嬉しくないorz 08/07/20 |
|
帝都の中心の城にある一室。
男が一人、来客用の部屋で報告書の山と戦っていた。 かりかりとペンが動く音だけが響く中、重いドアが開く音が割り込む。 「おや、シオン。久しぶりだねぇ」 どこか皇帝の面影を持つその男は、部屋の訪問者に対して目を向けずにそう言う。 訪問者が顔をしかめたのが、顔を見ないでいてもはっきりと感じた。 「やめろラシャリエ、どこで誰が聞いているのかもわからんのに」 「ああ、じゃあ今は「ロッソ」なのかい?すまないね、こっちを読むので忙しくて」 男の手には、昨日の戦闘の報告書が握られている。 その報告書は訪問者の愛娘であるアロドが書いたものである。 流石、その若さで皇帝の補佐を勤めるだけあって読むだけで戦況が手に取るようにわかる。 彼女がその役職に就いたのは義父が魔術師団団長だからとよく陰口を叩かれるが、よく頑張っているようだ。 彼女を補佐にと推薦した男は、ふふと笑う。 「それで、何の用だい?」 「しばらくこの国を出る。一応挨拶に来た」 「また行くのかい?君も落ち着かないね」 相変わらず報告書から目を離さない男は皮肉ってみせた。 何せ十年もの間各国を放浪し、その間を弟に任せていたのだ。 それが、帝都が復帰しないうちにまた出て行くとは、何かあったのだろうか。 ふと思い当たる事があって、男は問うた。 「…ミオが見つかったのかい?」 「ある人から聞いてさ。信憑性が高いし、一応確認してくる。デンとか連れて行くけど、いいか?」 「すぐに戻るなら多分平気かな。珍しいね、人を連れて行くなんて。そういうことは一人でするのに」 「あー、万一の為にだな、俺の契約精霊を国に置いておく。ただ、魔力の消費が馬鹿にならないからな…念の為、だ」 「そう。吉報を待ってるよ」 男は訪問者を見ない。 ただ、報告書を眺めてはペンを走らせるだけ。 訪問者は腕を組み、つまらなさそうにその光景を見ていた。 十分近くの時が過ぎ、そういえば、と口を開く。 「俺がいない間、アロドはよくやっていたみたいだな。お前が推薦した時はどうしてやろうかと思っていたが」 「何、弟をちゃんと補佐してくれるのは彼女しかいないと思っただけさ。君の育て方がよかったのかな?」 「血だろ」 何を今更、と訪問者は面白くなさそうに言う。 男はそれを聞いて、訪問者に向かないまま溜息をついた。 「前から思っていたけど、君は私を買いかぶり過ぎていないかい?」 「何言ってんだ、そんなことくらい気付いてるんだろ?」 「…私はそんなに頭のいい人間じゃないよ、ましてや議長になるような人間でもない」 「お前の短所はその謙遜しがちな性格だよ、もう少し自信を持て」 今度は訪問者が溜息をつく番だった。 この度議長になった男は、名君と謳われるミーア・ディロイ・ヴァムストルの兄に当たる人物だ。 ヴァムストル家の長男は幼少の頃より聡明で神童と呼ばれていた。 皇帝がその兄から政治学を学んだのは有名な話である。 しかしまあ、彼は自らの能力を過小評価しているようだったが。 「どう見てもお前の天才肌が遺伝してるだろ」 「君に預けたからさ。こんな親の才など、真実を知れば彼女も捨てるに決まっている」 「だからそう卑屈になるなって、アロドを守るためにお前がよかれと思ってしたことだろ」 「それでも、私があの子を手放したのは許されない事だった」 「なら、今からでも遅くはない。もう落ち着いたんだろ、そろそろ引き取ったらどうだ」 男は何も言わなかった。 ただ、じっと黙って報告書を読むだけだった。 訪問者はそれを見つめていたが、やがて諦めたように口を開く。 「アロドを頼むぞ」 「…連れて行かないのかい?」 「偶には交流しろ、幸いあいつはお前を気に入ってるみたいだし」 「でも」 「お前が迷っているせいでアロドには父親も母親もいない。いるのはこんな俺だけだ、お前が必要なんだよ、あいつには」 「君なら…」 「お前じゃないといけないんだよ!」 男は黙った。それでも顔は上げない。 訪問者はそんな事を気にした様子もなく、捲くし立てる。 「昨日の襲撃は俺のせいだ、奴等の狙いは俺だった、だから俺はここにいちゃいけない、だけどあんたの娘を巻き込みたくない。 ミオを助けに行くのは奴らと戦うためもある、きっと激しい戦闘になる、あの子には耐えられないだろう。 今回はあの子を連れてはいかないけれど、俺は死んでしまうかもしれない、そうなったらアロドは独りだ。 頼むから、あの子を独りにしないでやってくれ、あの子の支えになってくれ」 俺みたいにしたくないから、と訪問者は聞こえるか聞こえないかの声で呟く。 彼の過去を男は知らなかったが、それでも、男にはその悲痛な叫びが届いたはずだ。 男は問う。 「シオン、ひょっとしてこれが本題だっただろう?」 「でなかったらとっとと出発してる」 「…わかったよ、そこまで言うなら、アロドに真実を打ち明けよう。ただ」 「何だ?」 「絶対に戻ってくるんだよ。娘に泣かれたくない」 かりかりと続いていたペンの音が止んだ。 男は机の上にペンを置き、報告書を纏める。 「戻るさ」 シオンは答える。 「義父を殴るような娘だけど、俺も親馬鹿だからな」 その言葉に男はようやく報告書から目を離し、訪問者を見て、そして吹き出す。 苦い顔をする彼の左頬には、大きな湿布が貼られていた。 男は目を細めて笑う。 「私も殴られるかね」 「殴られろ殴られろ。俺と同じ目にあえコノヤロウ」 男は、本当に、可笑しそうに笑った。 *** 帝国の交通手段は大まかに三種類ある。 一つは馬車。これが一番ポピュラーな移動方法で、他国もこれが一般に使われている。 二つ目は獣馬。馬とは違い、乗り心地が悪い為あまり使われないが、緊急の時には用いられる。 三つ目は移動用魔方陣。これは帝国全土に点々とあり、全ての魔方陣はシオンが初代皇帝に頼まれ大昔に描いたものである。 今でもその魔方陣は商人や旅人によって使われ、長距離移動には重宝されている。 もちろんこの帝都にも、魔術師団宿舎内に魔方陣がある。 昨日の戦闘で全壊してしまった宿舎だったが、建物の地下に魔方陣があった為、幸いにもまだ使えるようだ。 力のある兵士が瓦礫の山を崩し、地下室を掘り起こした。 そうして今、魔方陣はひっきりなしに起動している。 普段は使う人間は少ないが、今は緊急事態で帝都から地方へ逃げる人々でごった返している。 魔方陣のある部屋の端、一同は移動魔法で地方へ飛んでいく人々を見ながらシオンを待っていた。 「あ、帰ってきました」 アロドの声に、その場の面々が振り返る。 そこには見慣れてしまった銀髪の少年ではなく、30代半ば程の男が立っていた。 赤茶の髪に真紅の瞳、中背で服装からして地位の高さを思わせる男だった。 「ただいま、遅くなってすみません」 「…本当にシオンなのか?」 男を観察するように、まじまじと見つめるレス。 同じくプリムも信じられないと言いたげに口をぽかんと開けている。 どこからどう見てもシオンとは似つかない。むしろ別人と言ってしまった方が納得できる。 その様子に、「ロッソ・ヴァン・ダルダム」…この国の魔術師団団長の姿を知る三人は笑う。 ロッソはふふと笑って、丁寧な口調で話す。 「その名前で呼ぶのはやめてください、……正体バレるだろ馬鹿野郎」 最後は地の底から這い上がるような、どすの利いた低い声だったが。 爽やかな笑顔から見え隠れする殺意を感じて、レスは身を引いた。 なるほど、確かに中身はシオンのようだ。かなりの違和感は感じるが。 周囲の人々はこちらに気付いてはいないようだった。 「ラシャリエ殿に会ってきました。許可は下りましたよ」 「ラシャリエって誰なの?シオ…、ロッソ様ぁ」 危うく名前を言いそうになりながらも、プリムが聞く。 「ああ、話していませんでしたね。陛下のご兄弟でユーヴェの土地を管理するヴァムストル侯爵家の家長ですよ」 「へぇー」 「そして、今は帝国議会の議長です。陛下が居ない今、この国のトップは彼になりますからね」 「え、でもロッソ様って魔術師団の団長だから陛下の次に偉いんじゃないの?」 「正確には、陛下の下に魔術師団団長と騎士団団長と議長が三すくみになっているんです。私とウィノデン殿がいなくなったら必然的に彼が政権を握りますからね」 「それって帝国を好き勝手にできるって事じゃないですかー、平気なの?」 「大丈夫ですよ、彼は信用に足る人物です。決して私利私欲の為に動こうとはしませんから」 それに、帝国一政治のうまい人ですからね、とロッソは言う。 でなければシオンは彼を議長に任命したりなどしない。 例え本人にその気がなくても、だ。 兎に角凄い人なんだね、とプリムは結論を出した。理解しているのかどうかは定かではないが。 「それに、娘を陛下の補佐に任命したのも彼ですからね。ねぇ、アロド?」 「ええ、ラシャリエ様には感謝してもしきれません。昔から私によくしてくれますし…」 アロドの言葉に、ふ、とロッソは微笑んだ。 その笑顔の意味が分からず、アロドは何か変な事を口走ってしまったのかと思い直す。 しかし思い当たる事が見つからずに混乱する。 「ははは、気にしなくてもいいよ。それより…シュティーナ」 「何?」 「その、隣の子は…?」 遠くからロッソ達を傍観していたシュティーナの隣には少女が一人、立っていた。 先程からずっとシュティーナの傍を離れない所を見ると、どうやら知り合いのようだ。 「ああ、見覚えないの?」 「ええと…」 「ロッソさんロッソさん、いたじゃないですか、ほら、人質になっていた」 デンの言葉に、ロッソは「ああ、あの!」と手を叩く。 ミオを救出する時、彼と対峙していたゾナが人質にしていた少女。 あの時は暗がりだったせいか、それとも怯えていたのか、小さく見えた少女は意外と背が高かった。 髪は白銀色、瞳は翡翠色をした、見目の整った少女だった。 そういえば劇団員と聞いていたが、なるほど、ここまで美人なら客受けもいいだろう。 「名前はクレメンティア。助けてもらったから礼がしたいって、話は通してあるから気使わなくてもいいわよ」 「あの…昨日はありがとうございました」 ぺこんと頭を下げるクレメンティア。 美少女に礼をされて嬉しくならないはずがない。プリム以外の男は皆それにつられて礼をする。 「何よ、デレデレしちゃって」 「まあまあ。男ってのはそういうもんですよ」 「煩い優男、一番嬉しそうな顔してたくせに」 「あ、見られちゃいましたか」 笑って誤魔化すデンの脛にプリムは蹴りを入れた。 痛い痛いと喚くデンを横目に、シュティーナが話を続ける。 「ちょっと色々あってね、私達もあんたについていくわ」 「え?」 「向こうにも別れて移動してる劇団があってね、そっちに用があるからついでに連れてってもらおうと思って」 「はぁ…まあ、いいですけれど…」 つまりシュティーナはロッソの魔方陣移動を足代わりに使おうと言うのである。 ロッソは正直不服ではあったが、ミオの居場所を教えてもらった代金を考えると安いものだ。 まあ、恐らく後で追加請求されるだろうが。 「所で、皆集まってますか?」 「ああ、一応全員いるが」 「一応ヒルダも連れてきましたよー」 ヒルダとはデンの愛馬、ヒルデガルドの事だ。 昨日の戦闘でも敵の攻撃を避けたり、デンが攻撃しやすいよう上手く立ち回ったりとよく訓練された獣馬である。 彼女は人の邪魔にならないよう、部屋の隅で大人しく伏せていた。 「…フォクスはどうしました?」 「倒れてる」 ほら、とレスが顎をしゃくる。 その後ろでは青白い顔をしたフォクスが壁を背に座り込んでいた。 相当酷い様子だ。 「…大丈夫ですか?」 「いえ、平気です、多分。いつもの事ですから。出発できます」 ごほごほと咳き込むフォクスの様子は、どうみても重病人のそれである。 旅に連れて行って大丈夫かなぁ、とシオンは正直不安になったが本人が平気と言うならいいのだろう。 まあいざ倒れたらデンの獣馬に乗せればいいか、と前向きに考える。 ロッソはアロドに向き直る。 「アロド、後は頼みましたよ…ラシャリエ殿の補佐をしてあげてください」 「私が力になれるかはわかりませんが、尽力してみます」 微笑むアロド。 ロッソは、果たしてこれでよかったのかと、そんな思いが脳裏を掠める。 アロドは自分を師として、父として慕っている。 そんなアロドを自分は何年も騙してきたのだ。きっと自分も許されるべきではないだろう。 もしもラシャリエが父として名乗れば、ロッソが…シオンが真実を知っていた事が明らかになる。 彼女は自分を恨むだろうか。それとも。 「アロド」 「はい」 「もし、貴女の本当の父親が迎えに来たら、どうしますか?」 何も考えずに、口からぽろりと落ちた言葉。 アロドは一瞬面食らったような顔をしたが、そうですね、と呟く。 「殴ります」 ぶ、とロッソは吹き出した。 今彼の頬には特大の湿布が貼られている。今朝方アロドに殴られたのを隠す為だ。 その下は今も真っ赤に腫れたまま。 今まで魔法で治療する暇もなく、湿布を貼ったまま放置していたのである。 ロッソはそこをかりかりと指で掻いて、先程ラシャリエとした会話を思い出した。 頑張れよ、ラシャリエ。そっと心の中で合掌する。 「殴るんですか」 「ええ、だって、私を孤児院に叩き込んでおきながら迎えに来なかったわけでしょう?今更父親面されても遅いです」 「…」 頑張れラシャリエ、超頑張れ。 そしてついでに、自分にもその恨みの矛先が向かないことを祈る。 もう一度あの無駄に綺麗な右ストレートを受けたくはない。二度目はごめんこうむる。 しかしアロドは、シオンの心情を知ってか知らずしてか、ぽつりと呟いた。 「一発殴って、それから、「お父さん」って、呼びます」 お父さん。 アロドは、ロッソを一度もそう呼んだことはなかった。 いつも「父上」と、敬意を示して呼んでいた。 シオンの胸を、ずきりと痛みが走る。 悔しい?悲しい? 今まで精一杯愛して育ててきた娘が嫁に行くと父親は泣くというけれど、これがそうなんだろう。 自分の守護を離れる彼女。自分を父と呼ばない彼女。 果たしてこれでよかったのだろうかと、悩んでいた自分は、恨まれることを恐れたのではない。 彼女が離れていってしまうのが、怖かった、ただそれだけだった。 家族を亡くした自分が、初めて手にした新たな家族。 それを自身で手放すのが怖かった。 「…そう、ですか」 踵を返して、ロッソは魔方陣へと向かう。 魔方陣の前では人々が列を成して順番を待っていたが、ロッソだと知ると快く順番を譲ってくれた。 獣馬が立ち上がり、デンが手綱を引く。 古びたローブに身を包んだプリムが駆け寄る。 死人のような顔色をしたフォクスを、レスが荷物のように担ぎ上げて運ぶ。 ふわりと、クレメンティアとシュティーナが魔方陣の上に飛び乗る。 アロドはラシャリエを補佐しなければならない為、旅にはついてこない。 この、ミオを救い出す旅は恐らく危険なものになるだろうとシオンが考えた結果、アロドは残ることになった。 彼女は何も言わず、ただ忠実にその命令を聞いた。 きっとこの旅に付いてきたいんだろうとは思っていたが、敢えて何も言わずにおいた。 魔方陣がシオンの魔力と呼応して光り出す。 この魔方陣は普段、帝国内でしか使えないが、実はシオンだけが使えるルートがある。 そのうちの一つ、シオンの知人の家へと通じるルートがあり、今回はそこへと移動する。 ロッソはアロドに背を向けて、詠唱を綴る。 「何も言わないんですか?」 デンが言う。 ロッソは無視して、詠唱を続けた。 今振り返ってはいけない。アロドに別れを告げてはいけない。 きっと今、自分は泣きそうな顔をしているだろうから。 自分が旅に出た後、ラシャリエはきっとアロドに真実を告げるだろう。 そうしたら、自分はもう義父ではなくなる。彼女には本当の父親が戻る。 そう思うと無性に悲しくなった。 泣いてはいけない。 自分は、最後までアロドの強い義父でいたかったから。 それなのに。 「『お父さん』!」 詠唱がぴたりと止まる。 ああ、振り返ってはいけないのに。こんな顔見せちゃいけないのに。 それなのに体が止まらない、言うことを聞かない。 彼女と、視線がかち合う。 「いってらっしゃい!」 彼女がどんな顔をしていたのか、俺には理解できなかった。 視界がぼやけて何も見えない。 泣いてはいけない。泣いちゃいけないのに。 「いってきます!」 俺は、笑顔のまま涙を流していた。 ゴ ッ ド ・ ビ ー ・ ウ ィ ズ ・ ユ ー *** 十四話。 ・親馬鹿シオン。 ・ほぼ死人のフォクス。 ・男の本能突っ走りなデン。(楽しかった) ・「頑張れ、超頑張れ」なんだっけこれ。 ・「いってらっしゃい」「いってきます」 今回やりたかったのはこんなん。 アロドさんの出生は十九分の一話で公開予定。 07/12/28 |
|
あの日、貴女に会えてよかったと今では思う。
でなかったら貴方と貴方には会えなかったから。 そうでなかったら俺はきっともうここにはいなかっただろうから。 貴女はとても厳しい人だけれど、それでも恩人だと胸を張って言える。 ありがとう。 気恥ずかしくて言えないけれど、そう思っているから。 *** 出生だとか、神国だとか、シュティーナの事まで…幾ら何でも欲張りすぎじゃないか? …まあ、確かに。今まで何も話さなかったしな、この位は欲張った内には入らないか。 わかった、話すよ、とりあえず皆そこらへんに座っててくれ。 あ、シュティーナは外に出てて。…いや、色々と気恥ずかしいっていうか、あんたのいる前でそんな話してても…。 ああもういいから外出てってくれ!あることないこと話すな!!そんな事した覚えはないっ!! …ふう。 皆座ったな?よし。 今から五千年も前の話になる。いや、それ以上前かもしれない。 幻獣保護地区島、通称「緑の杯」…昔はそんな名前すらなかったけれど…そこに龍族が住んでいたっていうのは知っているよな? 何らかの理由によって滅んだって言われている。俺も理由は知らない、父さんは教えてくれなかったから。 その龍族が滅ぶ前、どれくらい前か知らないけれど、一人の龍が「杯」から出て行った。 …ん、龍は「一人」って数えるのが正式な数え方だよ? あんな狭い島に巨体の龍がごろごろいる訳ないだろ、普段はヒトと変わらない姿をしているから「一人」って数えるんだ。 話が逸れたな。 その龍は元々龍族の族長をしていた。龍族の中でも最高の魔力量を持った男だった。 ああ、よく知ってるなフォクス。龍族の長になれるのは、龍族の中でも最高の力を持つ銀龍だけだ。 もちろんその男も銀龍だ。 ……察しがいいな。そうだよ、その男が俺の父親。名前はジオルガ。ジオルガ・ハーティリー。 龍は個体数が少なくて姓は持っていないはずなんだけれど、人に紛れて生きなきゃいけないから自分で作ったらしい。その話は後に話すよ。 で、ジオルガは何故「杯」を出たかっていうと…簡単な話、龍族から追い出されたのさ。 ジオルガは情けない男だった。俺の記憶の中でも、母さんにこき使われていたって事ばっかり出てくる。 誰よりも強大で強力な魔力を持っていたのに、争い事が苦手で、そのくせ理想論ばかり話す、優しすぎる男だった。 対して、普通の龍っていうのは基本的に戦闘意識が強くて、少し傲慢で、頑固者揃いなんだ。 ジオルガが「杯」を出る前、その頃龍族の中ではある問題が起こっていた。 俺も何なのかは知らない。父さん、それについては絶対に話そうとしなかったから。変な所で頑固なんだから。 とにかく、その事で他の龍と対立しちまって、あまりの頑固者揃いにあきれて「杯」から出ていっちゃったらしい。 その問題が後に、龍族を滅ぼした理由になったらしいんだが…やっぱり話してくれなかった。 それから、ジオルガは「人として」あちこちを旅して回った。 幻獣に始まり、龍も例外じゃなくて、昔から「杯」に住む生物はよく良薬や魔法具の材料になったのはわかるな? まあ龍が薬の材料になるっていうのはデマカセなんだが…。 だから、龍として狩られる事を恐れてジオルガは人っぽい姓を自分で名乗ったんだ。 ジオルガはあちこちを旅した。よく行き倒れていたらしいけど、持ち前の悪運で何とか生き残ったって笑っていたよ。 ははは、確かに。行き倒れ癖も悪運もちゃっかり遺伝してるよ。何度死に掛けたか。 とりあえず、ジオルガの話はおしまい。 俺が生まれる数年前、ロズベルド騎士諸侯領はその頃からあった。 ロズベルドはイー・ヴァー・ディドル帝国の隣国だよ。「獣」の前足から腹部にかけての領地を持っている。…プリム、戦争仕掛けるなら隣の国くらい知っておけよ。 まあ、これが驚いたことにロズベルドの代表・ミュハトルテ家はその頃からあってな…一度も家系が途絶えたことがない。 いい加減あそこも潰れてほしいんだけどな…まったく、何代にも渡って押しかけてきやがって…ぶつぶつ…いや、なんでもない、気にするな。 話を元に戻そうか。 その、ミュハトルテ家の本家には当時、とんでもないお転婆娘がいたんだ。 女のくせに騎士に憧れてて、下手な男より男らしくて、髪なんかばっさばさで…あ、そうそうあのゾナみたいな感じ。 多分見当はつくと思うけれど…それが俺の母親、アイシャ・イシャーク・ミュハトルテ。 その頃18歳だったアイシャは、何をどうやったのかちゃっかり騎士になっていた。 しかも並の騎士じゃ勝てやしない。技術も体術も馬術も人並み以上の能力を兼ね備えた最強の騎士だった。 うん、多分デンも勝てない。絶対勝てない。国一個賭けてもいい、あれは絶対武神の娘だよ、一番ごっつそうなの。 でも、ロズベルドの代表っていうくらいだからミュハトルテ家はかなりの良家だ。 そんな娘がいたら世間体にはちょっとアレだろ?当然、親族全員で騎士を辞めさせるよう色んな手を尽くしたらしい。 けれど、そんな事で辞めないのがアイシャって女だ。いや、もうあれは男だ。男の中の漢だ。 強い強いって言ってきたけど、これがなかなか、頭の回転が速いというか、悪知恵もよく働くらしくて。 それで親族全員と騎士権を賭けて戦ったって話だ。 そうして親族と戦いつつ、騎士として武勲を挙げつつ暮らしている間に、ある男と出会った。 出会った、というより助けた、だな。行き倒れてたんだから。 ………。 ……………続きは言わないのかって? ここら辺はあんまり詳しく聞いた事がない。 どこぞの色ボケが話す時に惚気るから途切れ途切れにしか聞いた事がないんだよ。 ったく、どつかれるって知ってて惚気る辺り性質が悪いや。 とりあえず、俺が聞いた限りじゃ親族の陰謀で母さんがどこぞの貴族の家に嫁ぎそうになって、助けられたまま居候していた父さんが龍化して救出して、そのままロズベルドから逃亡したらしい。 はっきり言っちゃ、駆け落ちってやつだな。その後「黒の大地」に落ち着いて、俺が生まれたって話だし。 …ああ、「黒」はその頃も魔物やら魔獣やら沢山いたぞ?人の村だってあった。 人は住めないって言われてるけど、確認されてないだけだ。閉鎖的な空間でちゃんと今も村はある。 ああでも、俺の住んでいた村はもうないけどな。 ……神国の元になった組織に、皆殺しにあったから。 俺の出生はもういいな? 父親は龍、母親はヒト。出身は「黒の大地」。 うん、そうだよ、正確には俺は龍族じゃない。獣人みたいに言うなら「半龍」ってとこか。 それでも、父親が銀龍なもんだから下位の緑龍よりも力はある。比べた事ないからわからないけど、どっちかというと銀龍の血が多い。 だから半龍でも守護神の代わりにはなった。犠牲はつくけどな。 …いい、もうわかってるから。皇帝が皆死んだのは俺のせいだって。 さてと、話を続けるか。 黒の大地、今じゃどこにあるかわからない村に、俺の一家は住んでいた。 本当に素朴な村だよ、自給自足の生活をして、魔物対策に薬草を村周辺に生やしたり、強靭な戦士が何人かいたりしたのが変わってる所かな。 俺はそこで平和に、本当に平和に暮らしていた。 父さんとは家事と基礎知識、母さんとは体術と畑仕事。…普通教わるのが間逆だよな…。 まあ父さんは魔力が強いだけでひょろかったし、母さんは見るからにぶきっちょだし…。 …そんな風に、15年の間は「人間」として暮らしていた。 父さんが龍って事は知っていたし、自分も強大な魔力を持っていたことは知っていた。 でも、それまでは何故かヒトと同じように成長していたんだ。 龍の寿命は、最大で二万年にも及ぶはずだ。それが龍の個体数が少ない理由でもあるんだけど。 やっぱり、周りが人間ばっかりだし、自分でも人間寄りなんだろうなって思っていたのが理由かもしれない。 15歳までは、俺は人間として生きて、人間として死んでいくんだと、無意識に思っていたよ。 15歳のある日、村が突然壊滅させられるまでは。 ここで神国の話をしておくか。 って言っても、俺も神国の事はよく知らない。その基盤になった組織の事しか知らないんだ。 その組織は、元々不老不死について研究していた組織だった。 昔は寿命を延ばせる人間なんて両手さえあれば数えられるくらいだったからな、今もそうだけれど。 一部の学説では魔力を生命力に変換できれば延命できるって話があるが…あれ、結構本当だよ。 ある程度、魔力保有の限界を越えると魔力が溢れて、その分が生命力に変換されるらしい。 生命力を魔力に換える魔法があるだろ?あれの逆みたいなものだ、相当限られた人間にしか仕えないけどな。 で、その学説を信じた連中が「組織」。主に魔力の研究をしている。 当然、大量の魔力を必要になる筈だ。そして、大量の魔力を持つものといえば……龍しかいないだろうが。 その組織が、どこで知ったのか「はぐれ龍」の存在を探して…最後に、父さんに辿り着いた。 村はまず、火をつけられた。 住人が次々殺されていった。組織は秘密主義だったから、目撃者は全て抹消した。 母さんは俺と父さんを逃がして、一人で囮になって…殺された。死に際も見れなかった。 そして最後に、二人とも組織に追い詰められた。 父さんを怖いと思ったのは、あの時が初めてだよ。 完全に怒り狂っていた。俺の前で初めて龍化して、そして、捕らえられた。 プリム、神国はここを襲う際に魔術師を捕らえるって言ったな? ひょっとして魔力制御装置とか持っているか?…そう、それ。 魔法を使う者を相手にする時、魔力制御装置は強力な兵器になる。 それは龍とて同じ。地上最強と謳われた銀龍でさえ、機械には勝てなかった。 当然、その時に俺も捕まった。 最悪だよ。 俺と父さんは別々の部屋に閉じ込められ、実験体にされた。 勿論、龍の魔力を抽出する為だ。 しかし龍は神と同等の力を持つ存在。その為、「完璧な存在」と言われている。 完璧だからこそ、その力の大半を担う魔力を抽出する事は不可能だ。 当時の組織はそんな事すら知らなかった。 ただ、何とかして魔力を抽出しようと、必死になっていた。 そうして、確かにその努力は報われたよ。 龍は完璧な存在であるが、半龍ならばどうか? 答えは簡単だ。完璧じゃないのさ、俺は。 苦心の末、奴等は俺からほんの少しだけ魔力を抽出する事ができた。 その喜びは尋常でなかった筈だ。俺は無理矢理魔力吸われて気分最悪だったけどな。死ぬかと思った。 そして組織の研究者達は更に魔力を手に入れようと、研究対象を完全に俺に向けた。 当然、父さんの方は手薄になる。 そのチャンスを父さんは逃さなかった。 何とか魔力制御装置を破壊して、龍化した後俺を救出してくれた。 そうして俺達は組織から逃げ出せたけど、ずっと実験体にされていたんだ、体力なんてない。 父さんは一人残って囮になり、俺は何とか逃げ切れた。 ここまでが、神国の話。 その後俺はたった一人で生きてきた。 両親がが教えてくれた体術と魔術が一番役に立ったのもその頃だ。 基本的な魔法しか知らなかったけれど、元々持っている魔力が高いから並の魔法使いには負けなかった。 いざという時、体術はとても役に立った。 そうやって、自分の能力を生かして用心棒をしたり、あるいは放浪したり…色々やって、世界の知識を手に入れていった。 その頃の俺は自分の姿を変える魔法なんて知らなかったから、15歳の子供のままやっていくのは辛かったよ。 そのせいで人間不信に陥った事もあった。生きていくことが辛くなったりもした。 でも、そんな生活があったからこそ、俺は今も生きているんだと思う。 生きていく術は、自分で見つけていった。 目立つ事は極力しなかった。また組織に見つかると困るからな。 ひっそりと、仕事を色々変えたり居場所を変えたりして組織の事を調べているうちに、いつの間にか裏の仕事をしていたよ。 人を殺した事なんてもう数えていられない、危険物を運んだことだってある。…まあ、並大抵な事じゃ死にはしないからいいんだけど。 そうやって生きていた頃、俺はシュティーナと出会った。 シュティーナは仕事の関係で知り合った。 ちょっと危ない仕事でさ、シュティーナは情報屋だったんだ。今も移動劇団の団長をしながら情報屋をしている。 で、まあこう言うとなんだけど…シュティーナは裏の世界じゃ噂になっていてな…「魔女」って呼ばれているんだ。 まあ俺はそんな生活を数百年は続けていたし、もうプロだとか玄人だとかそういう言葉は超越していたよ。 二人で仕事をしている間に、シュティーナが本当に「魔女」だって知って驚いたよ。 魔女、その名の通り、魔法を使う女。 シュティーナの場合、魔力を生命力に換えられるってだけなんだけど…まあつまりは、俺以上に生きているってことだ。 シュティーナはシュティーナで、俺が半龍だって知って驚いたみたいだけど。 仕事が終わって、シュティーナは俺を、ある男の所へ連れて行った。 …ん、その男の事は追々わかると思う。今は話さないでおく。 その男も俺よりも長い間、生きていた。 魔法は使えなかったけれど、職業上の関係で色んな魔道書を持っていて、そこから俺は魔法の知識を得た。 そのうち、魔道書を読みに行っていたら、いつの間にかその男の家に居候になっていた。 その後俺はたまに仕事をするだけで、魔法の鍛錬ばかりしていた。 新しい魔法を覚えたり考えたりするのは楽しかったよ。幸い、教えてくれる人はいたし。 その間もシュティーナは男に会いに来ていた。 別に変な関係じゃないからな、商品の受け渡しをするだけだ。 大体あいつは女運がない。ろくな女に会わない。シュティーナもその一人、ろくな女じゃない。 俺のことを生意気だからって鉄拳制裁するんだぜ、指輪は凶器になるって嫌ってくらい知ったよ。 まあそれでも、色んな事を教えてくれたし、あいつに会わせてくれたのも感謝してる。うん、多分。 そうして暮らしているうちに、俺はやがて、ミオという男に出会った。 そして戦争に加担して、帝国を建てて、勝手に守護神なんかにされた。 そうして、今に至る。 *** 「…とりあえず、ある程度は話した、これでいいだろ」 シオンはコップに入った水を一気に飲み干した。話すのは喉が乾く行為だ。 ようやく話が終わって、皆は背伸びをしたり考え込んだりと、各々が動き出す。 「なんていうか…さらっと壮大な話を聞いたような…」 「当たり前だ、五千年の歴史だぞ。嫌でもそうならざるを得ないだろうが」 「そりゃそうですけど、それにしても随分と波乱万丈な人生送ってきたんですねぇ」 「そうか?」 相当の時間が過ぎている為、辛かった頃などその内忘れてしまうから。 デンはそれを聞いて、一瞬だけ呆れたような顔を見せたが、直にそれは掻き消えた。 自分だってそう変わらないか。 「ちなみに俺は今でもその組織を追っている。組織があの後壊滅して、そのデータを今の神国が引き継いだみたいなんだけど…」 「神国の事は知っていたんですか?」 「いや、国まで作っているとは知らなかった」 水差しから水を注ぎ、シオンは再び水をあおった。 「その、シュティーナから紹介された男なんだけれど…あいつが昔関係していた「人形」の開発チームがデータを受け継いだらしい」 「「人形」って…魔道人形ですか?」 「いや、「機械人形」…オートドール、とかいうやつだ。今の魔道人形の基礎になっているみたいだけど、元は人間の仕事を手伝う人形として開発していた」 「はぁ…そんなの作れるんですかねぇ」 「実際あるんだから信じるしかないだろ、俺だってちょっと疑っていたよ」 シオンは肩をすくめて、皮肉っぽく笑う。 「それに、あいつは―――」 「ねぇ、シオン、いつまで話続くのよ。待ちくたびれたわ」 ばたん、とシュティーナがドアを蹴って入り込んでくる。 ここは病院だぞ、とか、蹴るなよ、とか突っ込みたい事は山ほどあったが黙っておくことにする。 「話は終わったの?」 「まあ、一応な」 「あ、そ。ならいいわ、話したい事があるの」 つかつかと一直線にベッドまで歩き、腰掛ける。 そして、にこりと笑う。 シオンはすぐさま警戒し、少し身を退く。 こんな風に笑うのは何か企んでいる時だけだ、それも自分が有利になるような。 「何さ」 「さっきマーロザにいる私の下僕から連絡が入ったのよ」 「…その下僕って言い方やめてやれよ、可哀想だ」 「話は最後まで聞きなさい」 ぴしゃりと叱られ、シオンは黙った。 それを確認してシュティーナは口を開く。 「喜びなさい、あなたの大事な皇帝さんが見つかったわ」 錆 色 ノ ス タ ル ジ ア 。 +++ 第十三話。 家のパソコンがリビングに置かれてから非常に書きにくい状況になっていました。 仕方なしに学校で書いていたのですが…にゃふから散々突っ込まれましたよ、ええ。 若にも目撃されてました…嗚呼ああ。 これからは忙しいので(普段と変わりませんが)月一の更新になります。 それでもよかったら、どうぞ気長に更新を待ってあげてください。 それと、今回の話は長文だらけで読みにくくてすみません。あんまり面白くないです。 それでは。 07/09/28 |
|
早死にしてしまうのと。
永遠に生きてしまうのと。 半永久的に生きるのと。 どれが一番素敵だと思う? 不思議な色彩を身に宿した妖艶な魔女は、そう、俺に訊いた。 *** 「シオン」 レスは彼の名を呼ぶ。 「あんたの選択肢は、二つしかなかったのかい?」 一つ、己が皇帝を死に追い遣る≪疫病神≫だと理解した上で国を建て直し、≪守護神≫として国の悲惨な歴史を繰り返すか。 一つ、己が皇帝を死に追い遣る≪疫病神≫だと認識した上で国を他人に任せ、死を以って≪守護神≫として皇帝殺しの責を負うか。 今までの皇帝は揃って悲惨な死を遂げてきた。それを、シオンは自分の責と薄々承知している。 余りにも沢山の皇帝が同じような死を遂げ、帝国の皇帝の死は「当たり前」だと、何時の間にか国の中でもシオンの中でも定着し、彼は己の責を忘れかけていた。 だからシオンは今まで、己の責とわかっていながら、その現実から目を背けていたのだ。 自分は直接彼らを殺した訳ではない、その死は自分とは関係無いはずだ、まだ認められない、理由がない。 だが今回は違う。 シオンが守護神だったから帝国は彼を狙う神国に襲われ。 シオンが守護神だったから帝都の魔術師は魔力を抽出する為に攫われ。 シオンが守護神だったから皇帝は魔力を奪われ死に至るだろう。 全てはシオンが帝国の者だから、という理由で。 いや、それだけならまだ立ち直れる術はあったのかもしれない。 今回は「二回目」なのだ。 初代皇帝、ミオ・ヴァイ・ラグスタ。 そしてその生まれ変わりと称される、117代皇帝、ミーア・ディロイ・ヴァムストル。 同じ魂を持つ人間を、二度、己のせいで殺してしまったのだ。 どうしたら皇帝を死なせずに済んだか? シオンが≪守護神≫でなければ皇帝は二度死ななかったのか? シオンが≪疫病神≫でなければ彼らは死なずに済んだのだろうか? シオンがもっと早く認めていれば二度も死なずに済んだのか? 嗚呼、答えなど最初からあったはずだ。 シオンが帝国に関わっていなければ、皇帝は全員死なずに済んだのだ。 『シオンさんは完全に打ちのめされてます。このままじゃ自殺しかねないですよ』 レスの脳裏に、飄々とした顔でさらりとそんな事を言ったデンの顔が浮かぶ。 あの時、デンはこっそりとレスに耳打ちして、シオンの今後の行動の予想を述べたのだ。 嗚呼、あんたの言う事は間違ってなかったよ、いけすかない騎士め、とレスは脳裏に浮かんだ騎士の顔を引き裂いた。 「今死ななくったっていいだろう、あんたを頼りにしてる奴らもいるんだ、国を立て直すくらいしてからでもいいんじゃないか?」 「それが自殺を止める台詞か、俺の性格知ってるだろ」 「ああ、無駄に意地張る馬鹿だったな」 手にしたナイフはまだ腹に向けて刃を煌めかせている。 シオンがあと数センチ、腕を自分に向けて動かせば、ナイフは易々とシオンの腹を裂くだろう。 ここは小さいとはいえ、病院ではあるから一命は取り留められるかもしれないが、シオンに生きる意志があるかどうかが問題だ。 「どうしても死ななきゃいけないのかい?」 「117人の皇帝と女帝、…その他にも大勢の命を、俺は奪ってきたんだ。俺が死んだだけでじゃ拭い切れないほど罪を犯してきた」 「疫病神云々の話はもういい、飽きた」 「誰から聞いた?」 「さあ、アロドかな?デンかな?ナイフ放り出して聞きに行けばいいじゃないか」 レスにしては妙に挑発染みた口調に、シオンはむっとする。 諦め顔で慣れた手付きでナイフをくるくると回し、それを横の棚に突き刺した。 「…わかった、降参だ。大人しく復興事業に勤しみますよ」 「あんたにしちゃ聞き分けがいいな」 「自分自身馬鹿な事をしてるとは思っていた。こんな事、ミオは望んじゃいない」 連れ去られた皇帝は「国を護れ」と言った。ならば死ぬのは命令に背く事となる。 ジレンマに潰されそうになり、どちらかを選ぶしかないその状況で、命令に背きかけた。 そこまで焼きが回ったか、とシオンはこめかみを指の腹で抑え、溜息をつく。 それに、 「…出てこいよ、いるんだろ?」 その言葉はレスに向けたものではない。 レスが入ってきた扉の向こう、その後ろに、彼女はいる。 レスが来た時点で気配はわかっていた。 あの魔力の波長を忘れるものか、禍々しい、それなのにどこか優雅さを思い起こさせる、そんな気配。 「やあねぇ、そんな言い方はないじゃない。慰めに来てあげたんだから、ねぇ?」 その髪は甘美な蜂蜜色、その瞳は妖艶な孔雀色。 しゃらり、しゃらりと全身に纏ったアクセサリを鳴らし、妖艶な美女は扉をくぐる。 彼女の名はシュティーナ・エルサ・マリア。昔からの知己である。 相変わらずけばけばしい女だ、とシオンはもう一度こめかみを押さえた。 「何でこんな所にいるんだよ、シャートの所に行っていたんじゃなかったのか?」 「マーロザに行くとは言っていたけれど、あんな引き篭もりに会うわけないじゃない。こっちからお断りよ」 「魔具オタクの次は引き篭もり呼ばわりか、シャートが可哀想だ」 「いいのよ別に、いっそ魔道具と結婚してしまえばいいわ」 できるか、と思わず心の底で思ったが、反論すると色々怖い女だ。 こう見えて拳で言い聞かせるタイプだから怖い。 昔よくハイヒール履いた足で蹴られたり指輪のついた拳で殴られたりした覚えがある。貴金属は凶器だ。 身に染みてわかっているから、一応黙っておいた。 「それに30年前の話じゃない。長生きしてるって言っても一つ所に収まる気なんてないわ」 「そーかい。で、何だって帝国に来ていたんだ?俺に会う為じゃないだろ」 「あたしが移動劇団の団長してるのは知っているでしょ?偶然こっちに来てたら劇団員が変な女に攫われちゃったのよ」 「変な女?」 「そ。銀灰色の髪してて鎌を持った女。急に帝都が襲われたかと思ったら、そいつが攫ってっちゃったのよ」 それはひょっとして神国幹部のゾナ・ルヴェールの事だろうか。 よく女とわかったもんだ、と思ったがこの魔女の事だ、それくらい簡単にわかるだろう。 「その劇団員とやらは戻って来たのか?」 「何言ってんのよ、あんたが助けてくれたって聞いたからここに来たのよ」 「俺が?」 「ああ、あんただけじゃなかったわね。そのお仲間さんも。先に挨拶はしておいたわ」 ねぇ、みなさん? シュティーナの背後には、先刻部屋を出て行き、仕事をしているはずの面々が立っていた。 *** 「…なぁ、これは新手の罰ゲームか?」 自暴自棄になっている所をレスに見られたし。 この世で一番苦手なシュティーナには会うし。 ああそれに、きっとレスが来た辺りから他の面々は一連の出来事を聞いていたのだろうし。 きっと今日は厄日だ。きっと昨日も厄日だったんだ。厄日なだけに厄介な奴らばっかりだ。うまいことも言えてない。 「そうですねぇ、俺達に何も話さず、おまけに仕事だけ押し付けて逃げようとしたシオンさんへの罰ゲームです」 にやにやと笑ったデンが憎らしい。殴るぞコノヤロウ。 「レスをけしかけたのはお前だな?」 「ははは、バレちゃいましたか。ちなみに全員ここにいるのも、俺の仕業です」 もっとも、彼女はイレギュラーでしたが、とデンはシュティーナに微笑んで見せた。 一体どこで鎧を脱いだのか、私服姿のデンはつかつかとシオンの前まで歩き出す。 十年前はこんな薄笑いを浮かべるような男ではなかったのに、とぼんやり考える。 あの頃はまだ、デンもアロドも幼さが抜けない子供だったのに、何時の間にか大人になってしまった。 自分はまだ、子供のままなのに。 「貴方の事だから、きっと全ての責任を負って自殺でもしかねないと思ってましたから」 「お前が俺の事を言えるか」 「まぁ、俺も昔しかけたことだから言えませんけどね。でもこれ、アロドさんが言ったんですよ?」 アロドが? 背の高いフォクスの後ろに隠れるようにしていたアロドが、その言葉に、おずおずと出てきた。 「…私は、父上と血は繋がっていませんが…それでも、あの頃は貴方を一番間近に見ていました」 「……」 「貴方は優しすぎる。だから長い間、目の前で代々の陛下が亡くなられても、一番辛い守護神の地位を捨てる事はなかった…」 「…」 「捨てるとしたら、きっと、全ての責を背負って自身もろとも消し去るつもりだと思ったんです…」 「……」 「貴方は、誰よりも優しくて、誰よりもこの国を想っている人だから」 何も言えなかった。 いつの間にこんな事を言うくらい成長したんだろう、とか、怒ってるんだな、とか、色々思う事はあったけれど。 何より、俺の言葉を奪ったのは、その涙だった。 昔からあんなに気丈で人前では絶対泣かなかった子が、自分の目の前で泣いている。 何だか申し訳ない気持ちになって、何も言えなかった。 本当に、アロドやデンは大人になって、俺はまだ子供なんだなだと、思い知った。 「父上、少し、いいですか」 「え?」 ボゴッ。 急に右頬にとんでもない衝撃がきた。 予想外の行動に反応できるわけもなく、右ストレートという物理攻撃をまともに食らった俺はしばらく脳震盪と戦う羽目になった。 痛い。まともな人間なら歯の一本二本折れたに違いない。 ていうか、女の子なら普通平手だろ、拳で殴るなよ。しかも中指を僅かに上げるなんて高等テクどこで覚えたんだアロド。 デンがぱちぱちと拍手しているのが聞こえた。よし決めた、後で殴ろう。 まだぐわんぐわんと揺れ続けている頭を両手で抱え込んで俺はアロドに言った。 「………痛い」 「シュティーナさんが、一発殴っとけって。こう殴れと教えて貰ったんですが…」 お前か、道理であんな綺麗な右ストレートが出るわけだ。 シュティーナを睨み付けたら、彼女はそ知らぬ顔で明後日の方角を見ていた。 「でも、私、謝りませんから。一人で全て抱え込んで、誰にも話さないで、しかも…自殺なんて。父上だって悪いんですから」 「は、はあ…」 「私に相談くらいしてもいいじゃないですか、私は貴方の娘ですよ。父上なんて殴られて当たり前です」 「そこまで言うか…」 「あと、ここにいる皆さんに謝るべきです。こんなに迷惑かけたんですから」 「いや、ちょっとそれは…」 「父上」 何とか言い訳をしようとしたら、アロドがぼそりと呟いた。 やたら凄みのある声。 どこかで聞いたことのあるような、根強い恐怖心を呼び覚ます、そんな声。 ついでに暑くもないのに全身から汗が噴き出る。いわゆる冷や汗とかいうやつだ。 おかしいな、見覚えがあるぞこのシチュエーション。 ああ、あれだ。昔母親に怒られた時とかシュティーナの怒りを買ったときの。 懐かしいなぁ、あの時は散々叱られたっけ…なんて言ってる場合じゃない。 「ごめんなさい」 「…しばらく反省してくださいね」 どこでこんな精神的にくる凄みを身に付けたんだか。 どうしよう、ともう一度レスに目で訴えるが、むりむり、と顔の前で手を振られた。使えない奴め。 そんな事をしていると、デンがパンパンと手を叩いて注目を集める。 「はいはい、アロドさんの反抗期が始まったのはいいとして」 「いいのか」 「いいんです。で、そろそろ教えてくれませんかね、シオンさん」 指を銃の形に模して、シオンを指差すデン。 人を指差しちゃいけませんと教わらなかったのか。お前いいとこのぼっちゃんだったろうが。 「何をだ?」 「とぼけないでくださいよ、わかっているんでしょう?」 にっこりと笑うデン。 怒った顔のアロド。 無関心なシュティーナ。 腕を組んで事の成り行きを楽しんでいるレス。 黙ってはいるが興味津々なプリム。 巻き込まれておろおろしているフォクス。 「ひとつ、シオンさんの出生」 「ふたつ、神国との関係」 「みっつ、シュティーナさんとの関係」 「よっつ、これからの貴方の行動。もちろん自殺は認めませんよー?」 ばーんと言い、シオンに向かって銃を撃つ真似をした。 「さあ、洗いざらい喋ってもらいましょうか。シオン・ハーティリー様?」 逃げ道なんて、どこにもなかった。 青 空 ス マ イ リ ー 。 +++ 第十二話。 本当は八月にいっぱい更新しようと思ったら意外とできなかった件。 ネタが積もり積もってきたのでこれから(多分)たくさん更新できるといいなと思ってます。 帝国編はあと二話くらいで終わります。 途中ギャグになったのは最近うじうじしすぎたからです。 ちょっと明るい話にしたかったのです。 アロドさんはきっと武術のセンスがいいと思う。シュティーナさんはいい先生。 あとフォクスさんとプリムちゃんが空気なのはごめんなさい。いらない子じゃないです。 きっとこれから活躍する、はず! あとデン様でしゃばりすぎ。お前黙れYO! スマイリーはなんとなく。シュティーナさんとデンの事じゃないかなぁと(自分が書いたのに) 07/08/24 |


